ご飯のおいしさの要因を研究するのは東京農業大学応用生物科学部の辻井良政准教授。「おいしさの原則を理解できればおいしさを設計できる」と解説する。

 でんぷんはグルコース、タンパク質はアミノ酸が結合。脂質は脂肪酸とグリセロールが結合して構成される。食品を構成しているほとんどは有機物であり、何らかの原則で化学反応を起こすことで「食味を形成する」。辻井准教授はそれを化学しているのだ。

 コメがご飯になる炊飯過程だけでなく、貯蔵など、さまざまな場面で「おいしさ」の原則が現れる。たとえば口に入れる、その一口の食べ方までも、だ。辻井准教授自身が考えるご飯のおいしさとは、炊飯器を開けたときから始まる「ご飯の見た目と匂い」だという。

 色やつやはどうか、米粒は立っているか……。そこでおいしさのイメージがつく。次いで食感や味覚へと続くのだ。辻井准教授によると、粒感がしっかりしているご飯が人気で、大量生産用に機械で適正化されやすい米粒感のしっかりとした粘りの少ないご飯米の流通が、背景にはある。「コンビニの利用頻度が高い若い世代に支持されている気がします」(辻井准教授)

「追い越せコシヒカリ」と品種改良が続けられてきた今、トレンドが変わってきているのかもしれない。

週刊朝日  2017年9月15日号より抜粋