「内閣官房の国民保護ポータルサイトに書いてあることは不細工この上ない。要領も得ないし、こんなものを読んでいる間にミサイルが着弾してしまいますよ。これだったら、二階(俊博)幹事長が言った地下核シェルターの穴でも掘ったほうがよっぽどマシ。今からじゃ、間に合わないけど」

 8月29日に発射されたのは中距離弾道ミサイル「火星12」(射程距離4千~5千キロ)とされる。ほぼ垂直の角度で撃ち上げるこれまでの「ロフテッド軌道」から、初めて通常の軌道で発射した。最高高度は約550キロで、燃料などを抑制したのか飛翔距離は約2700キロにとどまった。

 小野寺五典防衛相は国会で「対応できる」と強弁したが、そもそも弾道ミサイルを撃ち落とすことは、今の日本の技術では限定的だ。日本は2段構えの弾道ミサイル防衛システム(BMD)を取る。日本に飛来してくる弾道ミサイルに対し、海上に配備された海自のイージス艦が発射する迎撃ミサイルSM3が大気圏外で迎え撃つ。撃ち漏らした場合、落下するミサイルを地上に配備したPAC3で撃ち落とす態勢になっている。

「SM3の到達高度は約500キロですが、今回発射された弾道ミサイルの最高高度は550キロだから届きません。PAC3は全国に17の高射隊があるが、1個高射隊でカバーできるのは半径20キロ程度しかありません。全国をカバーするのは不可能で、弾道ミサイルを同時多発的に大量発射されたら撃ち落とすのは無理です。日本は対中国を意識して南西諸島での自衛隊配備を進める一方、北朝鮮の弾道ミサイルを軽視し、対応が後手後手になっていたのです」(軍事専門家)

 米韓合同軍事演習の期間中に2度のミサイル発射をしたことで、北朝鮮との対話の局面は後退した。

 政府は、安倍晋三首相がトランプ米大統領との電話会談で「北朝鮮に対話の用意がないことは明らかで、今は圧力を強めるべきだ」と語ったことを明らかにした。
 軍事ジャーナリストの竹内修氏がこういう。

「諸外国から『万策尽きた』と言ったように捉えられかねません。そんな発言ができるのは、最後の手段を持っている米中ロだけです。日本は軍事的オプションがないのだから、結局は外交に頼るしかない。ある陸自の幹部は『正しく恐れるべきだ』と語っていました。北朝鮮の本当の狙いは、米国と直接交渉することです。過剰反応してアクセルを踏み込んだときこそ、もっと恐ろしい事態が待っているような気がします」(本誌・亀井洋志)

週刊朝日  2017年2017年9月15日号より抜粋