たくさんありますが、是枝監督との関係で言うと、カンヌ映画祭は大きかったですね(「そして父になる」で審査員賞を受賞)。あの賞もそうですし、作品は監督のものだと思っていますが、すぐ近くでそれを体験させていただいた。言葉も文化も違うなか、映画によって通じ合える。スタンディングオベーションを受けながら、「ああ、届くんだ、つながるんだ」と、国内でやってきた活動とは、まったく違う感動がありました。

──ライブでの大歓声とも違いますか?

 ライブの大歓声も、何回いただいてもうれしいものです。やっぱり、喜んでいただくことが、この仕事の一番のご褒美ですからね。でも映画祭、また行きたいですね。(スタッフを見て)この作品も、なんとかなりませんかね?(※)

──この作品には、真実がわからない怖さがあります。福山さん自身は、白黒ハッキリつけたいタイプ?

 若いときはハッキリさせたいと思っていましたが、年齢を重ねるなかで曖昧にしておいたほうがスムーズに進むことがあると思うようになりました。それを社会性とか協調性と呼ぶのかどうかはわかりませんが。

──昔の自分とは変わりましたか?

 変わったと思います。そのときどきの環境に応じてきた結果なので、具体的にどこがと言われると難しいのですが。いま思うのは……できれば揉(も)めないで生きたい(笑)。振り返ってみると、揉めて得したことってないんです。昔は何かあると顔や態度に出してしまっていたと思います。完全にできてるとは思いませんが、今はコントロールするようになりました。ただ、ものを作る人間としては、感情を抑制しすぎるのもよくないのかもしれません。この10年間、そんなことを考えながらやってきた感じですね。

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