睡眠時無呼吸症候群の患者の血圧変動(週刊朝日 2017年9月8日号より)
睡眠時無呼吸症候群の患者の血圧変動(週刊朝日 2017年9月8日号より)

 脳卒中や心筋梗塞など、血管の障害で起こる病気を「血管イベント」という。高血圧や糖尿病はそのリスクとしてよく知られるが、一見関係のないような睡眠中の症状が発症リスクや前兆になっている可能性がある。好評発売中の週刊朝日ムック「脳卒中と心臓病いい病院」からその一部を紹介する。

 寝ている時間は、一日の3分の1を占める。ぐっすり眠れているか、いびきをかいていないか、トイレに起きていないか──。こうした眠りの状態が、脳卒中や心筋梗塞(こうそく)などのリスクになっているかもしれない。

「いびきがある人に気をつけてほしいのが、『睡眠時無呼吸症候群』(SAS)です。周囲の人は、いびきの後に呼吸が止まっていないかをチェックしてみてください。SASの人は、30秒以上、ひどい人では2分近く止まる人もいます。無呼吸があると、夜間の突然死や心筋梗塞のリスクが約2倍になるといわれています」

 こう話すのは、自治医科大学病院循環器内科主任教授の苅尾七臣(かずおみ)医師だ。苅尾医師は夜間の血圧を測定する研究をおこなっている。測定の結果を見ると、無呼吸の後に一気に血圧が上昇していることがわかる。

 無呼吸状態になると、血液中の酸素濃度が下がる「低酸素血症」が起こる。この非常事態に対応して、心臓は酸素をからだに供給しようとし、心拍数が上がる。また、交感神経が活発になることで血管が狭くなる。その結果、急激に血圧が上昇するのだ。こうした非常事態が毎晩何回も起こるため、心臓と血管への負担は計り知れない。

 昼間の血圧が高くない人も、夜間の血圧には注意したい。

「過去に夜間に3度も脳卒中を起こしたことがある36歳の男性がいました。昼間の血圧は正常でしたが、夜間の血圧を調べると190~200mmHgまで上昇しており、無呼吸発作と関連していることがわかりました」(苅尾医師)

 SASは一人では気づきにくい。昼間に眠気がないか、起きたときに頭の重さがないかをチェックしてみよう。

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