直木賞作家・重松清の傑作小説を映画化(※写真はイメージ)
直木賞作家・重松清の傑作小説を映画化(※写真はイメージ)

 直木賞作家・重松清が1996年に発表した傑作小説を、「ぶどうのなみだ」がモントリオール世界映画祭で高く評価された三島有紀子監督が映画化した「幼な子われらに生まれ」。娘たちを演じるのは、オーディションで選ばれた南沙良、新井美羽らだ。

 商社に勤める田中信(浅野忠信)は、大学の准教授として仕事に打ち込む友佳(寺島しのぶ)と結婚して一人娘をもうけたが離婚。4年前に奈苗(田中麗奈)と再婚し、彼女の連れ子の薫と恵理子の4人で都内のはずれにあるニュータウンに暮らしている。奈苗もかつて沢田(宮藤官九郎)という男と結婚していたが、DVに耐えかねて離婚していた。

 表面は良き父親を装いながら、実は信と薫はうまくいっていない。やがて信と奈苗に新たな命が授かる。母の妊娠に戸惑う薫は、信に対して嫌悪感を露にするようになる。そしてついには「本当のパパに会わせてよ」と詰め寄る。沢田を捜し出し、連絡を取ろうとする信。そんな時、突然友佳から連絡が入る……。

 本作に対する映画評論家らの意見は?

■渡辺祥子(映画評論家)
評価:超オススメ、ぜひ観て
妻の連れ子は「本当のパパに会いたい」。別れた前妻と暮らす実の娘は「もっとパパに会いたい」。誠実に生きる父は仕事がうまくいかず、家の中も大変。血のつながらない家族の中でもがく現代の父の姿がリアルでしみじみ。

■大場正明(映画評論家)
評価:超オススメ、ぜひ観て
生々しい感情のぶつかり合いや外の世界から切り離されたようなニュータウンの風景が、逃げ場のない閉塞感を生み出す。良き父親を演じていただけの主人公が、もがき苦しみながら自分を見つめ直していく姿が印象に残る。

■LiLiCo(映画コメンテーター)
評価:超オススメ、ぜひ観て
家族のかたちを深く考えさせられた一本。子どもは本当に繊細。でも子どもに嫌われたくない親はもっと繊細かも。今回のキャスティングは、子役がみんな完璧で素晴らしい! 街で幸せな家族を見てもいろいろ妄想しそう。

■わたなべりんたろう(映画ライター)
評価:なかなかGOOD!
「あなたは理由は聞くけど気持ちは聞かないのね」の台詞が象徴的で、各人が相手を思いやり懸命に生きながらもうまくいかない様を描く。見応えがあるが、堅苦しさと場面転換の風景の象徴性がくどい時があるのが残念。

週刊朝日 2017年9月8日号