──今年のアラーキー・イヤーは集大成という意識もありますか?
「そういうふうに結論づけるような言葉は嫌いなんだけど、すべてのものに入れ込んでやってみるかっていう気持ちはあるね。年をとればとるほどいい写真が撮れるんだよ。経験は多ければ多いほどいい。最近はアンチエイジングって言葉が流行(はや)ってるけど、それじゃダメなんだ。人間は老いていかなくちゃいけないの。どんどん老いてみんなババァとジジィになれって言いたいね。年をとってはじめて感じることやわかることがあるんだから。何百人、何千人という女に会えば会っただけ、教えてもらえることもあるわけ。だいたいね、女がどんだけズルくてセコいか見えてくるからねぇ。まあ男はそれ以上だけどさ。目も衰えてくると、そういう部分にピントが合っちゃうのよ」
──今年はあと五つの展覧会があるそうですね。
「最後は、12月からはじまる香川県の丸亀市猪熊弦一郎現代美術館の個展で、それを終着駅にしようと思ってたんだけどさ。今ものすごく冴(さ)え渡っていて絶好調だから、まだ終わりそうもないね。むしろテンション上がりすぎて困っちゃう。だからまだ死にたくない。俗物のままもっと長生きして、もっとアバンギャルドな写真を撮りたいね。若いころの肉体的な勃起と違って、老人が精神的に勃起しちゃうと大変なんだよ。ハハハハ」
※週刊朝日 2017年9月8日号