林:それを自分で会得したんですね。ボイストレーナーもなしで。
新妻:はい。でも、声が出る感覚は、練習したからではないんですよね。踊りは努力すれば踊れるようになるんですけれど、歌はもともと声を持ってないと、努力といっても限りがある。ここも、この声帯を私にくれた両親に感謝しかないですね。
林:「レ・ミゼラブル」のエポニーヌ役のオーディション、5千倍の難関だったんですって?
新妻:はい、そうみたいです。
林:私、「波瀾爆笑」を見て知ったんですけど、たまたま学校の授業でほんのちょっと歌ったのを、誰かが聞いてたんですってね。
新妻:そうなんです。他薦なんです。
林:オーディションに受かって帝劇の舞台に立ったとき、どうでした?
新妻:私、5千倍だったことも、エポニーヌ役がそんなに重要な役柄だということも、そもそも「レ・ミゼラブル」が日本でどのぐらい知名度がある大作かも知らなくて、怖いもの知らずで入ったんです。ただただ歌うことが好きで、広いステージで歌えることが楽しくて。ミュージカルは見たこともなかったんです。
林:えっ、ほんとに? 「ピーターパン」とか、子どものミュージカルも見たことなかったんですか。
新妻:愛知県の田舎で生まれて、田舎で育ったので。それに、作品のルールが細かくあって、「右から出てきて、そこで歌って、左にハケてね」みたいに、言われるままにやっていたので、正直何をやらされてるのかあまりわかってなかったんですね。
※週刊朝日 2017年9月8日号