吉沢亮「満島ひかりさんに自分の芝居を見られるのはイヤだなと思った」

週刊朝日
 ゾワッとくる感じがあった。首の後ろから背中にかけてが痺れるような震えるような。面白いとか感動したとか、そんなシンプルな言葉では表現できない衝撃。事務所のスタッフから、「先輩が出ている舞台を観るのも仕事のうちだよ」と言われ、軽い気持ちで観に行った舞台で、その世界観に引き込まれ、「なんだこの臨場感は!」と、ただ呆然とした。

「実際に舞台に挑戦してみると、一つの場面や感情を作っていくのに、ここまで時間をかけるのかということに、まず驚きました。芝居のクオリティーを上げていく作業は、決してラクではないし、毎回自分の力のなさを痛感しますけど、だからこそ刺激をもらえるし、勉強になる。僕としては、最低でも年に1本は舞台をやっていきたいと思っています」

 昨年は、宮本亜門さん演出の舞台「ライ王のテラス」に出演。三島由紀夫の作品に触れたのはそのときが初めてだったが、難しい単語を羅列しながらの説明台詞の多さには、悪戦苦闘した。今秋出演する舞台「百鬼オペラ『羅生門』」は、「羅生門」「藪の中」「蜘蛛の糸」「鼻」といった芥川龍之介の代表作を、芥川の人生とも絡めながら、一つの物語にまとめあげた意欲作で、吉沢亮さんは、羅生門の下人と対峙する男の役だ。

「この間、稽古していて思ったのは、“俺一人だけ妙に語ってるな”ってこと(笑)。ただ、演出家のインバルさんとアブシャロムさんはイスラエル人なので、日本語がわからない分、日本語の響きやトーンにすごく敏感なんです。僕も、こんなに“音”を大切にしながら台詞を言うのは初めてですね。芥川龍之介のお話はそもそもがわかりやすくて面白いんだけど、そこに、外国の方ならではの発想で、奇想天外な妖怪が登場したりするので、サプライズ感満載の、すごい舞台になりそうです」

 稽古が始まったばかりのときは、共演する満島ひかりさんの演技に圧倒され、「こんなに上手な人に、自分の芝居を見られるのはイヤだな」と萎縮したこともあったという。

「明らかに、全キャストの中で僕が一番下手くそなんだけれど、今はそれも一周回って面白くなってきました(笑)。稽古とはいえ、一番近くですごいお芝居が見られるんだから、こんなに幸せなことはないです」

 舞台の話をするときは、初々しさや繊細さ、ひたむきさが表情や言葉の端々から溢れるが、人気漫画をドラマと映画で映像化した「トモダチゲーム」シリーズでは堂々の主役。持ち前の繊細さはそのままに、現代の若者らしい友達を思う気持ちや、見えない力に揺さぶりをかけられ、困惑し迷う様をリアルに演じている。

「この世界に入ったばかりの頃は、戸惑うことも多かったですけど、今は一生続けたいなと心から思います。作品に入ると、いつも新しい何かが待っていて、作品ごとに自分を更新できるところに、魅力を感じます」

週刊朝日 2017年9月8日号

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