「クリエーター同士の結婚ですから、互いに応援し合います。親族の行事は必ず参加しています。イギリス人と結婚した次女が出産したので、今年の春は孫の顔を見に夫婦でヨーロッパに旅行しました。老後はなるべく子供の負担にならないように夫婦で協力していく約束をしています」

 経済的に自立する女性であれば、前向きな別居という選択も可能だが、主婦の場合は離婚のリスクを無視するわけにはいかない。

 静岡県の主婦清瀬由紀子さん(64)は33歳の時に6歳年下の男性と社内結婚して、翌年長女を、2年後に長男を出産。転勤族だった夫を支えていたが、50歳の時、長女が夫の携帯電話をのぞき、夫の浮気が発覚した。数年前から女性と関係が続いていたのだ。夫に別れてほしいと言えずに1年以上悶々(もんもん)としていた。すると大学生になった長女が夫にメールをした。「私が援交してもお父さんは何も言えないよね」と。それがきっかけで、夫は女性関係を清算すると決意。その直後、夫は東南アジアに単身赴任し、数年後に帰国したが、女性の影はみじんもなかった。

「離婚しないでよかった。でも娘を傷つけてしまったのではと心が痛みます」(清瀬さん)

 なるべくなら離婚は回避したほうがいい。ただ、離婚しても、そこから学んだ熟年カップルがふさわしい夫婦の形を築くこともある。

 東海地方に住むカーサ・久美子さん(仮名・59歳)は、5年前に10歳年上でカナダ人の家具デザイナーと再婚。シングルマザーとして育てた息子が社会人となり、英語力を磨いて第二の人生を歩もうと、英語の先生をインターネットで探したところ、今の夫と出会った。夫はバツ2で、最初の結婚はカナダ人、2度目は日本人だったが、仕事に専念するあまり、妻のことは二の次だったという。久美子さんと再婚してからは、食事やホームシアターを楽しみ、2人の時間を大切にしている。

「夫に対する尊敬の念が彼を安心させていると思います。私が1カ月のうち10日ぐらい上京して派遣で働いていることも適度な距離感があっていいみたい。その間、都内にある実家で高齢の母親に親孝行もできますしね」(久美子さん)

 この人と添い遂げる、と決めたところから、道は開ける。うまくいく熟年夫婦のヒントが隠れているかもしれない。

(作家・夏目かをる)

週刊朝日 2017年9月1日号より抜粋