横浜市に住むブライダルアドバイザーの和泉明子さん(74)は、55歳から70歳まで夫と別居して仕事場に近い都内で一人暮らしをしていた。4年前に夫が軽い脳梗塞(こうそく)で倒れてから自宅に戻ったが、15年間の別居生活でリフレッシュできたと語る。

「22歳で結婚しました。相手は8歳年上で公務員。妹の上司でした。夫の実家の敷地内に、私たち夫婦、夫の両親、そして夫の姉で出戻りの小姑と3世帯が隣り合っていました。性格のきつい小姑の陰湿な監視に耐えられませんでしたが、夫は姉をかばい、一切ノータッチでした」

 27歳で長女を出産した和泉さん。だが長男、次男、長女、次女という夫のきょうだいと両親の結束が固く、次第に疎外感が募っていった。また、読書が好きなインドア派の夫と、旅行好きなアウトドア派の和泉さんとは趣味が合わず、会話も少なかった。小姑から逃れるためにせっせとアルバイトをし、40歳の時に出会った心理学に傾倒した。勉強をしながら、公共施設のアドバイザーとして働く。

「55歳で今の職に就くと、経済的に自立できました。勉強会や仕事などで深夜帰宅も増えたので、別居したいと夫に申し出ると、承諾してくれました。これで離婚ができると喜んでいたところ、長女が泣いてしまったのであきらめましたが、15年間の別居はとてもよかった」

 高齢の小姑は認知症が進み、以前のようにつらく当たることもなくなった。夫は復職するほど快復し、和泉さんは仕事が生きがいとなっている。

 千葉県在住のコピーライター菊池小夜子さん(70)は一つ年下のフリーカメラマンの夫と25年ほど前から、自然と仕事中心の別居状態に。大学卒業後、広告会社に就職した菊池さんは25歳で結婚。2年後に大手企業のクリエーター部門に転職すると、31歳で長女、35歳で次女を出産。結婚後、800万円の中古の一軒家をはじめ、不動産投資で都内の四つの中古マンションを購入。そのうち、渋谷区にあるマンションが夫の事務所兼住居となった。夫は半月を海外で仕事し、帰国すると利便性の高いエリアにあるマンションで、早朝から深夜まで撮影や現像にあたった。子育ては同居の母親に手伝ってもらった。

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