50代の男性会社員は、術後3カ月の診察で「家庭や料理店でてんぷらを食べても大丈夫なのに、駅の立ち食いそば店でてんぷらそばを食べて電車に乗ると必ず下痢をする」と吉田医師に打ち明けた。

 原因は、外回りの合間に慌てて食事をしたこと。入院中は術後障害を防ぐため「少量ずつゆっくりと食べるように」などと指導され、そのとおりに食事をするが、職場復帰すればそうはいかなくなる。

 40代の大学講師の場合、自宅療養中はいつでもトイレに行ける安心感があったが、復職後は「講義中にトイレに行きたくなったら」と不安になり、下痢の回数が増えてしまった。講義のある日は、朝食を食べずに出勤するという。

「生活環境を大きく変えるのは難しいので、入院中と同じような型どおりのアドバイスをしても現実的ではありません。急ぎの食事では消化しにくい揚げ物を避けるとか、食後電車に乗る時は下痢止めを飲んでおくとか、本人が置かれている状況に応じた対策を講じる必要があります」(吉田医師)

 術後は新しい食生活を受け入れていかなければならないが、「受け入れやすさは、性格によって異なる」と吉田医師は言う。

 たとえば、頭で理解したことをきちんと実行できる「几帳面型」の人は、〝病気を治すために胃を切ったから仕方がない〟と納得し、新しい食生活を受け入れやすいが、反対に慎重になりすぎて生活を楽しめない傾向がある。

 一方、自分の好きなようにしないと気が済まない「奔放型」は、“そうは言っても食べたいものは食べたい”性分のため、食べすぎてしまうなど失敗も多い。

 奔放型の人は少しブレーキをかける、几帳面型の人は食事を楽しむためにあまり我慢をしないようにするなど、折り合いをつけていく必要があるという。

「主治医は術後の患者さん個人個人の悩みに想像をめぐらし、対応することが重要です」

 と吉田医師は強調する。とはいえ、患者は悩んでいても、限られた診察時間のなかで忙しい主治医に遠慮して打ち明けられないケースも多い。そこで吉田医師はこうアドバイスする。

「いつからどんな時にどんな症状がどの程度出てくるのか、自分で観察したうえで、主治医に伝えましょう。病院では医師だけでなく、看護師や栄養士など専門職の知恵も借りてください」

 同ワーキンググループでは、術後障害の細かな対処法を盛り込んだ小冊子を作成している。

「ホームページからダウンロードもできるのでぜひ活用してください」(同)

週刊朝日 2017年9月1日号