Bクラスに定着していた西武ライオンズが破竹の勢いで連戦連勝している。このまま優勝を目指すのには何をすればいいのか。西武の元エースで監督経験もある東尾修氏が助言する。

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 パ・リーグが2強から3強に変わった。3位の西武が59年ぶりの13連勝をマークする快進撃で、首位ソフトバンク、2位楽天に迫ってきた。一般的に、5ゲーム差前後なら1カ月あれば追いつける可能性が出てくる。上位球団の自滅を期待しなくても、自力で追いつける差に入ってきた。ここからが重要な戦いとなる。

 8月4日からのソフトバンク3連戦(メットライフドーム)。初戦に逆転勝ちで13連勝を決め、連勝が止まった2戦目も驚異的な粘りだった。1-7の劣勢から八、九回で追いつき、延長戦に持ち込んだ。3戦目は6-1の快勝。3連戦をしっかりと勝ち越した。

 最大11.5ゲーム差をひっくり返して優勝した昨年の日本ハムは15連勝して、大逆転優勝へとつなげた。夏場の大型連勝には、同じ雰囲気を感じるよね。あとは連勝中にチームに定着した「こうやれば勝てる」「こうやれば得点できる、抑えられる」という戦い方を最後まで貫くこと。芽生えた自信を疑うことなく、継続していってほしい。

 とにかく打線に切れ目がないと同時に、随所に足が絡んでくる。1番の秋山は安打を打てるだけでなく、自身初の20本塁打と長打力も期待できる。9番を打つ昨年の盗塁王の金子侑が絶好調だから、下位打線から上位にチャンスが来る。2番のルーキー源田に関しては、つなぎもできるし、出塁すれば足を使える。3番浅村、4番中村には好機が数多くまわってくる。続くのが不調のメヒアに代わって救世主のごとく現れた山川。辻監督が我慢して使ってきた外崎、捕手の炭谷も打席での集中力、つなぎの意識は増している。

 
「次の1点」へのこだわりが昨季とはまったく違うよね。昨季は12球団ワーストの101失策だったが、源田の加入で変化した。ソフトバンク3連戦では浅村がヘッドスライディングで併殺を阻止していた。彼がこんな気迫を見せたのは初めて見たよ。

 投手陣も、開幕直後は「1点も取られちゃいけない」と投球が縮こまっていたが、今は違う。1試合平均で5点前後は取ってくれるわけだから、六回、七回まで3~4点はいいと、勇気を持って攻めていける状況が整っている。以前から言ってきたが、投手力を作る要因の一つは強力打線だ。エースの菊池雄星にはあまり関係ないが、例年7~8勝で止まっていた投手陣が2桁以上勝って自信を深めるには、最高の環境となっている。

 2008年のリーグ優勝を最後に、最近3年はBクラスに沈んだ。長く優勝から遠ざかるチームは「負け癖」がついてしまう。言い換えれば「勝ち方」が見えなくなるものだ。新監督になって最初のシーズンに大型連勝が生まれた。上位球団に互角以上の戦いをして勝つことがチームに自信を与えるものだ。こうなったら、勢いを殺さないことだけを考えればよい。投打がかみ合う歯車に、監督は適度に油をさせばいい。

 投打の主力に故障者が出ている楽天は、今は苦しいが、故障者が戻ってくるまで我慢して粘れると、チーム力は確実に増した状態で9月に入れる。ソフトバンクは毎年のように優勝争いをしており、最後の最後に勝負所が来ることはわかっている。本当におもしろい優勝争いになりそうだ。

週刊朝日 2017年9月1日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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