日本企業の業績回復の遅れは“会計制度”のせい? フジマキが解説

虎穴に入らずんばフジマキに聞け

藤巻健史

2017/08/25 07:00

 翌年、短期の金利が5%に上昇。会社は5%の資金調達の一方で、3%の長期債運用で2%の逆ざやに。大きな損失を計上した。逆ざやはその後数年続き、会社は莫大な損失を計上した。

 簿価会計だとトレーダーと会社の利害が逆になりうる。時価会計ならば、このトレーダーはボーナスを増やすために長期債を買うのでなく、売ったはずだ。まさにトレーダーと会社の利害が一致する。経営者の意思決定も同じだ。簿価会計だと自分の任期中のことだけを考え、会社の利益と相反する可能性もあるのだ。

 リーマン・ショックからの日本企業の業績や株価の回復が、火元の米国企業よりなぜ遅かったのか? なぜバブル崩壊からの立ち直りに手間取ったのか? 簿価会計だからだと私は思う。簿価会計だと、蓄積された損失が一気に噴き出す。

 時には前任者時代の損失までもが、損切りとともに具現化する。経営者も突然大損失を具現化する勇気が乏しくなり、決断が遅れる。更なる価格下落が予想されても、損失計上を先延ばしにしてしまうのだ。

 一方で、時価会計だとすでに損失が計上されており、損切りを決意しても更なる計上はごく小さい。余計な思惑でなく純粋な価格の方向性で意思決定できる。日本特有の飛ばしなどの不正経理は、したくてもできない。時価会計がガバナンスを高めると考える理由だ。

週刊朝日  2017年9月1日号

藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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