賃上げを求める連合の春闘集会 (c)朝日新聞社
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主な業種別にみた平均年間給与と年代別平均年間給与(週刊朝日 2017年9月1日号より)
主な業種別にみた平均年間給与と年代別平均年間給与(週刊朝日 2017年9月1日号より)

 求人倍率が上昇し続け、もはやバブル並みの人手不足である昨今、新卒の学生の就職活動も「売り手市場」だ。企業はあの手この手で採用アピールを繰り広げているが、中でも初任給の動向が見逃せない。

【主な業種別にみた平均年間給与はこちら】

 若いころは業界間の年収差は比較的少ないが、中高年になるにつれて開いていくのが一般的だ。ただ、業種・職種によって、破格の高額な初任給を出す企業も増えている。

 特に高額なのは、IT(情報技術)系のエンジニア職。IT系の新卒採用を支援するローカルイノベーションの工藤嵩大社長は「ウェブサービスが増え、エンジニアの需要が増えている。さらに、最近は人工知能(AI)の開発やビッグデータの解析などのスキルを持った学生の需要が高まっている」と指摘する。

 ゲームアプリ開発などのディー・エヌ・エーは、エンジニア職を年俸500万円で募集。今年からAIやビッグデータ関連の技術を持つ人材も募り、600万〜1千万円を掲げる。採用担当者は「この分野を研究している学生は少なく、市場価値が高い。決して高い給与ではない」という。

 ソフトバンク・テクノロジーは、大卒初任給が月22万5千円。ただ、ビッグデータ解析などの技術を持つ学生は、最大30万5千円まで上げる「グレードスキップ制度」を今年から導入した。「他社と同じことをしていては優秀な人材を確保できない」という。

 料理レシピサイト運営のクックパッドも、エンジニア職は年450万円。同社から専門知識を評価されると550万円まで上がる。

 なぜこれほど高額になるのか。就職みらい研究所の岡崎仁美所長は「AIなどの人材は争奪戦が激しく、給与水準を押し上げる要因」という。コンサルティングや不動産などの業界も、同様な高額傾向とみる。

 戦略コンサルティング会社のドリームインキュベータの初任給は年550万円。不動産のアーバンビジョンの初任給は月40万円だ。

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