中国事情にきわめて詳しく、中国を基本的に肯定している学者の一人に、なぜ中国が安保理決議に合意したのか、と問うた。

 米国による経済制裁のためかと尋ねると、それよりも「北朝鮮を懲らしめよう」という共産党幹部が多くなったのだ、と答えた。

 中国にとって朝鮮半島が韓国により統一されるのは最悪で、北朝鮮という緩衝材は必要なのだが、金正恩体制になってから北朝鮮が中国の言うことを聞かないばかりか、中国のことを厳しい口調で批判するようになった。だからこの際「懲らしめてやろう」と思っているのではないか、というのだ。ただし、安保理の制裁決議をそのとおり履行するかどうかは疑問だ、と答え、石油の輸出禁止が外されたこと、中国で働く北朝鮮人の新規の受け入れだけが禁止されたことなどが、中国が合意しやすくなった理由でもある、と付け加えた。

 ところで、ワシントン・ポストが8日に「北朝鮮がICBMに搭載できる核弾頭の小型化に成功している」と報じ、これを受けるように、トランプ大統領が「北朝鮮がこれ以上の威嚇行為を行うと、世界が経験したことがないような炎と怒りを受けることになる」と警告した。一方、北朝鮮側は「新型中距離ミサイルで、グアム包囲射撃を検討している」と警告している。緊張が火を噴くと予測する防衛関係者も少なくない。

週刊朝日  2017年9月1日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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