――別荘やアトリエ、絵画や骨董などを処分するようになったのだ。マスコミにも「終活」と取り上げられ、話題になった。

妻:私たちは二人だけだから、自分たちで始末しなきゃいけないんです。

夫:みんなどうにかしなきゃと思うけど、どうしていいかわかんないんだよな。でも1年使わないものは、一生使わないんだ。全部処分した。

妻:人にあげたりね。アトリエは壊して更地にするだけで、売ったお金とトントン。そんなものを残されたら、どれだけ迷惑か。

夫:写真も困るよね。「これ、誰だっけ?」ってなる。写真は1年に4枚あればいい。春、夏、秋、冬1枚ずつ。

妻:終活って体力がいるんですよ。私はいま62歳で、「まだ早い」って言われるけれど、いやいや60代でやっておかないとできない。精神的にも大変だし。

夫:すっきりしたし、ホッとしたよ。

妻:それに、どっちかが倒れて大変なときに「あれの処分どうする?」とか言い出せない。自分でお墓に入るわけにいかないから、どうしたって最後に迷惑はかけてしまうと思うけど。

夫:なんだか僕まで処分されそうだな(笑)。

――余分なものを捨て、身軽になった二人の今後は?

夫:仕事もねえ、僕はもう定年だし、そろそろいいかな?と思うんだけど、みんなが「仕事したほうがリハビリになるから」って。

妻:若い女の子にキャーキャー言ってもらえるし。さっしー(指原莉乃さん)とかに「中尾さ~ん」って言われてニコニコしてるんだから、呼んでもらえる間は「がんばりなさい」って送り出してるんです。

夫:それと旅行だね。

妻:1カ月に一度は旅行に行くんです。せっかく身軽にしたんだから、動けて楽しめる間は楽しみたい。

夫:子どもがいない分、二人の空気の「濃密度」をつくり出すっていうのかな。そのために旅に行く。

妻:一家だんらんという楽しみを私たちは知らないけれど、でも両方を持つことはできないんですよ。だから二人だけの道を選んだ責任として、せめて死んだあと残った人に「なんだよ、こんなもの遺して」って、舌打ちされないように。

夫:遺言もつくったよね。

妻:お墓もね。でもいろいろと始末しすぎちゃったから……。

夫:遺言を書き直さなきゃいけないな(笑)。

週刊朝日  2017年8月18-25号より抜粋