林:怖いです。わかります。

岸:私が言いたいのは、その魔の手がまだ伸びていない日本で、どうしてこれほど事件が起きるのか。親が子を殺したり、元の恋人を殺して切り刻んだり、逆恨みしたり、どうして「殺したい病」がはやっているのか。それは社会が悪いんですよね。平和だとされている日本で、いちばん陰惨な事件が起きている。テロも怖いけど、こっちも怖いですよね。

林:岸さんは遠くから愛する祖国をご覧になってきたけれども、今、近くから日本を見て、まずいなと思っていらっしゃるんですね。

岸:今の日本は本当に変ですよ。ま、それは世界にもいえることだけれど。安倍さんの外交は確かに日本の好感度を上げているかもしれないけれど、「尊敬されていますか?」「したたかな政治家だと恐れられていますか?」と言いたいです。しかも、なんであんなに大臣や議員がだらしないんですか。イヤですねえ。

林:ほんとにそう思います。

岸:女性優位が形骸化していると思う。男女を問わず有能な人を閣僚に入れてほしいですね。

林:おっしゃるとおりですね。

岸:最後に、私が今夢中になっている、新しく出版する小説のことを話してもいいかしら。

林:『わりなき恋』のあとの初めての小説ですか? もちろんです。ぜひお聞きしたいです。

岸:二つの中編小説です。「愛のかたち」と「南の島から来た男」、ぜひ読んでほしいわ。二つともフランスが舞台ですが、愛にはいろいろな形があるという内容です。

林:すごく楽しみです。

週刊朝日 2017年8月18-25日号より抜粋