「してほしいことだけでなく、してほしくないことも聞くように。大事なのは、親が心地よい環境をつくってあげられるかどうかです。だから頼りたい人とあわせて、頼りたくない人についても聞いておいたほうがいい。見舞いに来てほしい人、来てほしくない人を聞くのも同様の理由です」

 同時にきょうだいなど他の家族がどの程度、親の面倒を見る気があるのか確認しよう。その上で、親の代理で判断する人を決めたり、体の自由が利かなくなったときの住む場所について話し合うと良い。代理判断者は、高齢のパートナーより子どものほうが安心だ。

「代理判断者は、医者や看護師、介護職のスタッフと話して状況を理解し、そのつど判断を下すことが求められます。医療や介護制度の知識を理解できることを求められるため、若い子どもが役割を担うことが望ましい」(清水さん)

 介護が始まるときの窓口は、各地域に設置されている地域包括支援センターだ。必要に迫られる前に、一度センターに行ってみると対策を立てやすい。介護とまではいかなくても、「離れて暮らしていて、親の一人暮らしに不安がある」「ゴミ出しや買い物が一人でできなくて困っている」などの相談も可能だ。

 施設を検討しているなら、早い段階で一緒に見学してみると良い。お互いに老後のイメージができてプランが立てやすく、必要になったときに慌てずに済む。具体的な介護施設の見分け方は下記のとおり。

■良い介護施設の見分け方
1.高齢者をずっと車椅子に座らせていないか
2.イベント(麻雀、囲碁、料理教室など)を開催しているか。掲示板などをチェック
3.一人ひとりの身体機能に合った支援がされているか。椅子やテーブルをチェック
4.入居者によって、対応がカスタマイズされているか。声かけの内容などをチェック
5.高齢者が声を発しているか、入居者同士の交流はあるか
6.施設の職員が、入居者に話しかけているか

 この夏の帰省で、ぜひ話してほしいのは、延命治療について。ケアマネジャー歴16年の牧野雅美さん(アースサポート居宅介護支援事業所所属)は言う。

「元気なときは、ほとんどの人が延命措置をしないでと言う。しかし、孫ができたり、配偶者が病気になったりなど、その時々の状況で気持ちが変わる。“前に聞いたから”ではなく、何かの折に考え方や気持ちの変化をつかむのは大切なこと」

週刊朝日  2017年8月18-25号より抜粋