親のふとした言動や部屋の様子に「あれ?」と異変を感じたら、それは備えを促す“サイン”かもしれない(※写真はイメージ)
親のふとした言動や部屋の様子に「あれ?」と異変を感じたら、それは備えを促す“サイン”かもしれない(※写真はイメージ)
会話の異変チェックリスト 「日常会話式認知機能評価」大阪大学大学院提供 (週刊朝日 2017年8月18-25日合併号より)
会話の異変チェックリスト 「日常会話式認知機能評価」大阪大学大学院提供 (週刊朝日 2017年8月18-25日合併号より)

 認知症の兆し、足腰の衰え、冷蔵庫の中、料理の味、壁の手あか、財布の小銭……もう一人暮らしの限界かも。親のふとした言動や部屋の様子に「あれ?」と異変を感じたら、それは備えを促す“サイン”かもしれない。

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 時には漠然と「最近どう?」と会話を振り、どんな話題を持ち出すかみてみる。

「今どんなことに興味を持っているか、どんなことが気になっているのか、自然とわかります」

 在宅看護学を専門とする、柴山志穂美さん(埼玉県立大学准教授)が今、知りたいのが母の交友関係。誰と会うことが多く、母はその人をどの程度信頼しているのか、会話の中から意識的に探るようにしている。

 例えば「これ、◯◯さんからもらったお菓子なの」という何げない一言でも「良かったね」で終わらせるのではなく、「◯◯さんって、よく来てくれるの?いつ、どこで会ったの? 何してるの?」などと具体的に尋ねる。さらに、「運転をしなくなってから距離が離れた人」「運転できなくなっても、迎えに来てくれて連れ出してくれる人」についても、さりげなく聞き出すようにしている。

「それを重ねれば、定期的に会う人を把握でき、母が一人でいる時間がどれくらいあるかを知ることにもつながります。また、親にとって心地いい関係の人が誰なのかも、おのずとわかってくる。距離が離れている分、いざというときに誰なら頼れそうか、交友関係から探るようにしています」

 年を重ねるほど、他人とつながるコミュニティーがどれくらいあるか、交友関係がどの程度あるかが重要になる。周囲とのつながりが途絶え、新たなつながりをつくり出しにくい環境なら危険信号。前出の田中さんは、周囲とのつながりが、「住み替えの判断基準になり得る」と指摘する。

「今住んでいる環境が、本人にとって良いかどうかは、周りとの関係によるところが大きい。それが住み続けられるかどうかの大きな指標になります。周囲とつながりが濃い場合には、“呼び寄せ同居”は本人にとって逆効果になってしまうことも多い。交友関係を把握することは、住む場所を考える材料にもなります」

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