冒頭の山本さんのケースのように、異変を察知しやすいのが料理。味付けが変わったり、使う材料が減ってきたりしたら要注意だ。食材を切り、適度に火を入れ、味付けと、複雑な工程を重ねる料理は、段取り力や感覚、バランスが問われる分、変化が出やすい。以前と比べて、台所にインスタント食品が増えているようなら、料理をしなくなっている証拠だ。「最近、どんなものを食べてるの?」と聞いてみると良い。

 冷蔵庫内の様子にもヒントがある。消費・賞味期限切れの食材が増えていれば、要注意。食器の洗い方やしまい方にも変化が表れやすい。

 財布の中も見てみよう。小銭だらけなら、計算が面倒になり、お札ばかりで精算していることの表れだ。

 身体機能の衰えもチェックできる。ドアノブやタオルかけなど、部屋の中でつかまれそうな部分にぐらつきが見られないか、壁に手あかがついていないか。ぐらつきは、立つときに手すりが必要な証拠、壁の手あかは、伝い歩きをしている証拠だ。日常生活に支障が出ていることが考えられるため、注意する必要がある。

 また、この時期に注意したいのが、エアコンの設定温度や水分摂取。年をとれば温度の感じ方や口渇感にも衰えが見られるため、意識して確認すべき点だ。適切にエアコンを使えているかを測るには、においも一つの指標になる。

 異変を察知したら、それを確認し、そのときの親の反応までしっかり見ること。数多くの高齢者のリハビリに携わってきた田中康之さん(千葉県理学療法士会会長)は、取り繕おうとしたり、言い訳したりする場合は「そろそろ親を心配したほうがいいというサイン」だと指摘する。

「本人が自分の認知機能が落ちてきたことを認めたくない証拠。だから異変を感じたら、流さずにきちんと聞いて反応まで見ること。それが親の状態を測る指標になります」

 異変の兆しを読み取るには、普段の親の様子や生活ぶりについて、どれだけ把握しているかが鍵になる。

 では、親の生活ぶりについて探るには、具体的にどうすればいいのか。専門家が自分の親に対し、どう接しているか聞いてみた。

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