国民年金だけで考えると、理論的には62.5歳から保険料を納め始めても間に合う計算だ。すなわち、後納制度を利用して過去5年分のうち60歳未満までの2.5年分を納め、それから任意加入を続ければ、ちょうど70歳で10年となる。

 また、年金制度には、年金額には関係ないが受給に必要な加入期間には使える「カラ期間」という制度もある。それを加えて合計10年になればOKだ。カラ期間は、「1986年3月以前に会社員の専業主婦だった期間」「海外に住んでいた期間」など多くの種類があるから、素人判断は禁物だ。該当するかもしれない人は、年金事務所や社労士らに相談するのがいいだろう。

「日本で働く外国人労働者にとっても、日本の年金に関心を持つよいきっかけになる」

 と話すのは、社労士で年金実務の第一人者の三宅明彦氏だ。

 三宅氏によると、先進国を中心に社会保障協定を結んでいる国とは、短期間の加入でも日本から年金を受給できるケースが増えるという。未締結国の労働者でも10年加入すれば、それだけで日本の年金の受給権が発生する。

「今は帰国する時、掛け捨て防止措置である『脱退一時金』を請求する例が多いのですが、将来は日本の年金をもらおうという人が増えてくるのではないでしょうか。企業の人事関係者らは、そのあたりのことを意識し始めています」

 地方自治体も「恩恵」を受ける。生活保護にかかる費用を、年金財政に付け替えているともとれる動きがあるのだ。

「市役所の生活保護の担当者がよく年金事務所にやってくる。該当する生活保護の受給者から委任状を取って、年金請求を代行しているのです。一回、5~6人分をまとめて持ってくることもありますね」(前出の社労士)

 生活保護の受給者に年金が出るようになれば、生活保護費からその分を差し引ける。少しでも自治体財政を好転させようとする動きだ。

 いろいろな方面に影響を与える「10年短縮年金」だが、問題点もある。先の三宅氏が言う。

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