年金額の目安表(週刊朝日 2017年8月11日号より)
年金額の目安表(週刊朝日 2017年8月11日号より)

 全国の年金事務所が今、相談者で大混雑している。なかでも目立つのが黄色い封筒を持って訪れる人たちだ。

 年金事務所で相談にあたっている社会保険労務士が言う。

「これまで公的年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金)は加入期間が『25年』ないともらえなかったのですが、8月からそれが『10年』でよくなりました。過去にさかのぼって認められ、10年以上25年未満の加入記録がある人には、日本年金機構から年金請求書が黄色い封筒で送られています。それを受け取った人が相談に来ているわけです」

 機構によると、新たに受給対象になったのは約64万人。請求すれば9月分から年金が支給される。

 相談業務にあたっている別の社労士は、

「夫に通知が来たので夫婦で相談に来ていろいろ調べていたら、無年金者の妻も10年以上の条件を満たしていることがわかり、大喜びという例もありました」

 新たに年金が出てしかもサプライズが加われば、喜びもひとしおだろう。冒頭の社労士によると、次のようなケースもあったという。

「25年加入できなかった人たちですから、職を転々としている人が多いのですが、会社勤めが長い人ほど老齢厚生年金の部分が膨らみ、年金額が高くなります。調べていると新たに加入記録が見つかり、実は『25年』を満たしていることがわかりました。この場合は5年間さかのぼって年金を請求できますから、一度に数百万円が支給されました」

 こうした事例にとどまらず、「10年短縮年金」はさまざまな人に朗報をもたらしている。

 まずは、会社員で保険料を納めているのに、定年まで勤めても25年に届かず、年金受給をあきらめていた人たちだ。彼らも加入期間が10年以上あれば年金が受給でき、給料から天引きされている保険料が掛け捨てにならなくて済む。まさに、大朗報だろう。

 加入期間が10年未満で60歳を過ぎた人もあきらめてはいけない。

 60歳から65歳までの国民年金の任意加入や、保険料の「後納制度」が利用できる。それでも加入期間が足りない人は、65歳から70歳までの間、10年に達するまで引き続き任意加入が認められるので、可能性は十分にある。

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