野球の戦術、戦力もずいぶんと変わってきました。つまり、指導自体が変化してきた。バッティングでは、ひと昔前まではピッチャーの球種を見るために、いかに球数を投げさせるか。そういうものを考えた攻撃でしたが、今は1球目からガンガン打ちに行く野球。それだけでも百八十度の違いがあると思います。

荒木:確かにそうですね。野球を取り巻く環境は大きく変わりましたね。私がプロのコーチをやっていたときには、すでに今のような野球が浸透していたので、選手たちとの会話は必要以上に意識しましたし、決して上から抑えつけるような指導ではいけないと感じたものでした。

──そんな変化がある中でも、夏の甲子園にはいつの時代も変わることのないドラマが毎年のように生まれます。お二人にとって、2006年以降で印象深いゲームをいくつか挙げていただければと思います。

荒木:私は06年の88回大会、早稲田実業(西東京)と駒大苫小牧(南北海道)の決勝ですね。再試合まで持ち込む粘り強さ、そして最後も駒大苫小牧の田中(将大=現ヤンキース)投手を相手に戦い抜いた決勝を見て、早実の選手がこんなにもたくましいんだと感心したものでした。

渡辺:その年のセンバツで、我々の横浜は早実と戦って一方的に勝ちました。その数カ月後の夏でしょ。私も早実の戦いには驚きましたし、衝撃的な優勝だったと思います。ただ、早実には伝統の力があるんです。あの夏も早稲田カラーを前面に出して、選手と監督の強い信頼関係のもとで手にした優勝だったのではないでしょうか。早実の伝統が、3年連続で夏の甲子園決勝に進んだ駒大苫小牧よりも勝ったということですね。

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