2006年の駒大苫小牧―早稲田実の決勝再試合。9回表駒大苫小牧2死、田中将大選手は三振に倒れ試合終了。投手斎藤佑樹選手
2006年の駒大苫小牧―早稲田実の決勝再試合。9回表駒大苫小牧2死、田中将大選手は三振に倒れ試合終了。投手斎藤佑樹選手

 地方大会の熱気は甲子園へ──。8月7日に始まる第99回全国高校野球選手権大会を前に、横浜高校前監督の渡辺元智さんと野球解説者の荒木大輔さんに、2006年以降の夏の甲子園の「時代を映すベスト10ゲーム」を語り合ってもらった。聞き手はスポーツライター・佐々木亨氏。

*  *  *

──まずはお二人の「甲子園での出会い」からお伺いしたいと思います。1980年の第62回大会で、1年生だった荒木さんは早稲田実業(東東京=当時)のエースとして、渡辺さんが率いる横浜(神奈川)と決勝で対戦しました。

荒木:順調に勝ち上がっていきましたが、決勝は独特な雰囲気がありましたね。準決勝までの疲れもあったし、いろんなものが混じり合ったマウンドでした。

渡辺:非常にクールな1年生がすい星のごとく現れたなという印象でした。威風堂々としているマウンドの姿。抜群の低めへのコントロール。すごいピッチャーが出てきたなと思いました。ただ、荒木さん、決勝でボークがありましたな?

荒木:初回ですね。

渡辺:その姿を見て、少し動揺しているのかな、と。私は「いけるかもしれない」と思ったものでした。あの夏、我々は全国制覇を宣言して甲子園に乗り込みました。負けるわけにはいかない。関東の名門中の名門である早実が相手でインパクトが強かったのですが、優勝宣言をして初めて夏の甲子園を制することができたのは大きな自信になりました。私自身も監督として大きなターニングポイントになりましたし、その後の自信につながった大会だったと思います。

──あの夏から37年の歳月が流れ、時代の移り変わりとともに高校野球を取り巻く環境は今、大きく変わってきたと思います。

渡辺:確実に変化してきたと思います。たとえば、昔は水を補給せずに汗を絞り出し、体が軽くなったら「さあ、行け!」という野球。今は選手たちに水を飲ませずに何かあったら指導者の責任になる時代。そういう観点からも、今と昔では百八十度の違いがあると思います。その環境下で野球自体も変わり、選手たちの体形にも変化が出てきましたよね。我々の時代は、農耕民族丸出しの胴長、短足の時代でしょ。今は大谷(翔平=現北海道日本ハム)選手のような身長が高くて足が長い選手が増えましたよね。昔は180センチ以上の選手は大成しないと言われていましたけど、今は体が大きな選手が本当に多くなったと思います。

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