プロゴルファーの丸山茂樹氏が、全英オープンで見せたジョーダン・スピースのスター性について語る。

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 1週間ぶりに日本へ戻りましたよ! 飛行機から降りるときに、日本の暑さが襲ってきました。テレビ解説のお仕事で、男子の海外メジャー第3戦「全英オープン」(7月20~23日、英国中西部サウスポートのロイヤルバークデールGC)へ行ってたんです。

 みなさんご存じのように、優勝したのが23歳のジョーダン・スピース(米国)。6月下旬の「トラベラーズ選手権」で米PGAツアー10勝目を挙げて、少し上昇気流に乗ってきてるのかなというのはありました。でも今回もジョーダンにしてはショットにばらつきもあって、3打差のトップで出た最終日もスタートから4ホールでスコアを三つ落としてしまった。それが14番からバーディー、イーグル、バーディー、バーディーですから。どうすれば、あそこまで見事な切り替えができるのか。ほんとに素晴らしいなと思いましたね。

 スイッチの入るきっかけになったのが、13番(パー4)の「ミラクルボギー」でした。ドライバーショットが大きく曲がって、ボールは右の丘の斜面にある深いブッシュへ。「アンプレアブル」(1打罰)を宣言したジョーダンは、20分かけてボールをドロップする場所を探し、ホールとボールを結んだ線上でボールよりかなり後方の練習場に決めた。3番アイアンで打って、グリーン右手前へ。絶体絶命のピンチをボギーで収めたんです。

 
 そこからの大爆発です。あの勝ち方はみなさんの記憶に残るんじゃないですか? ああいう派手なことをやってのけるあたりがスーパースターですよね。以前のタイガー・ウッズ(41)みたい。いつもタイガーと比べちゃ申し訳ないんですけど、どうしても比べたくなっちゃうんでね。ああいうスーパースターが最近はいないですから。

 ジョーダンはこれで生涯グランドスラムに王手をかけました。8月10日開幕の「全米プロ選手権」で勝てば、タイガーを抜いて最年少での達成です。そうなると、もう完全にアメリカのヒーローですね。

 松山英樹(25)は7打差の5位から最終日をスタートしましたが、出だしの1番(パー4)でつまずきました。3番ウッドでのティーショットが大きく右へ曲がってOB。左からのアゲインストにも乗っちゃいました。このホールをトリプルボギーとしてしまいます。僕はちょっと離れたとこから見てたんですけど、ダウンスイングが降りてきてフィニッシュにいくとき、「右じゃない?」って言ったんです。少し体が浮いた気がしたから。

 疲れがあったのかもしれないですね。自分が普通にやれてると思ってても、違う動きをするケースがあるのがゴルフですから。だから、ああいう出だしのタフな状況ではフルスイングでいくよりコントロールした方がいいこともある。たぶん、そういうのも今後課題になってくるのかなという気がします。勝負をかけた最終日に、いきなり三つスコアを落とすってのはつらい。それでも、残り17ホールを1アンダーで回ったのはさすがでしたよ。

 日本では、大相撲名古屋場所で横綱白鵬(32)の通算勝利数が歴代1位になりました。若くしてモンゴルからやってきて、日本で骨を埋める覚悟をして。立派と言うしかないですよ。おめでとうございます。

週刊朝日 2017年8月11日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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