と説明するのは、『舌を、見る、動かす、食べるで健康になる!』の著者で、薬剤師の平地治美さん。漢方薬局での経験を経て、現在は「和光治療院・漢方薬局」(千葉市若葉区)代表を務める。漢方薬を処方する際は舌診を重視するが、なかでも気を付けてみているのが、舌苔だという。

「舌苔とは、食べかすや細菌、古くなった粘膜などで、一口で言うと垢のようなもの。そう言うと舌苔は汚いものと思われてしまいますが、デリケートな舌を保護する役目があり、ほどほどについているのが理想です」(平地さん)

 では、舌の状態でどんな健康問題が考えられるのか。対策とともに平地さんに聞いた。

 まず色から。赤いのは熱がこもっているということを表す。飲酒、肉や揚げもの、辛いものの食べすぎを控え、体に熱をこもらせないことが大事だ。
「逆に、白かったり、青白かったりしたときは、血行が悪くて体が冷えている可能性が高い。体を温める食べものをとり、冷たい飲みものは控えめに。冷房のきかせすぎにも注意をしましょう」(同)

 次に大きさ。いつもより大きいと感じたときは、体がむくんでいるサインだ。舌の端に歯の痕がつく“歯痕舌”になっているときも同様だ。

「水分過多で舌が膨らみ歯に当たることで、歯の痕がついてしまうのです。こういうときは、冷たい飲みものやアルコールの飲みすぎサインなので控えましょう」(同)

 舌苔にも注目しよう。白い舌苔がべったりついているときは、胃腸が弱り始めている状態。冷たいものや消化の悪い脂っこい食べものなどをとりすぎていることを表す。

「こういうときは肉やウナギなどのスタミナ食ではなく、豆腐など栄養価が高く、かつ胃に優しい食事をとるよう心がけて」(同)

 黄色い舌苔は、体の抵抗力が落ちて胃腸の細菌バランスが崩れた状態。口臭もきついことが多い。白い舌苔よりも不調が長引いているので、まずは食事の量を減らして胃腸を休めるようにしよう。運動や入浴で汗をかくなどして、体から老廃物を排出するのもおすすめだ。

 表面が割れてひびが入っている“裂紋舌”のときは、体に水分が足りていない、脱水状態を示す。熱中症のときにこういう舌になることが多い。水分は少量を何回かに分けてとるなどして、体に水分を補ったほうがよい。

 舌苔がまったくなくてツルツルしている“鏡面舌”や、舌苔が一部剥がれている“地図舌”があるときは、危険信号だ。体の抵抗力がかなり落ちているので、休養をとり、体力を回復するように努めることが大切だという。

「このほか、舌の先端がイチゴのようにブツブツしていたら、感染症などにかかっているサインかもしれません。また、舌や舌苔が黒い場合は、何らかの病気が進行しているか、薬の影響で黒くなっている可能性があります。いずれにしても医療機関で西洋医学的な検査を受けてください」(同)

 幸井さんには、中高年に起こりやすい舌の状態と中医学的に見た体質、食養生について教えてもらった。

 まず、舌の色が紫、あるいは濃い赤/表面がまだらに紫色になっている/舌の裏側の血管が紫色で膨れている場合は、全身の血流が悪くなっている「血(けつ)おタイプ」であることが多く、高血圧の人や肝機能が悪い人、心臓病の人によく見られるそうだ。

「血液ドロドロを改善する食材(タマネギやチンゲンサイ、青魚、酢)などを積極的にとるようにしましょう」(幸井さん)

 舌が厚くて大きい/舌苔がべったり付着しているときは、体内に余分なアブラや水分がたまった状態の「痰飲(たんいん)タイプ」を疑おう。高脂血症の人や胃腸が悪い人に特徴的な舌だ。

「味の濃い料理や肉や揚げものなどの脂っこい料理は控えめに、飲酒もほどほどに。とうもろこしや、ウリ科のトウガンやキュウリなどがオススメです」(同)

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