足フェチの長沢節は、くるぶしやかかとを美しく見せるデザインに取り組んだ(撮影/岡田晃奈)
足フェチの長沢節は、くるぶしやかかとを美しく見せるデザインに取り組んだ(撮影/岡田晃奈)
1970年に再演したショーの合間に、長沢節はショーの衣装でモデルに銀座を歩かせたところ、警官がすっ飛んできた
1970年に再演したショーの合間に、長沢節はショーの衣装でモデルに銀座を歩かせたところ、警官がすっ飛んできた

 コムデギャルソンを立ち上げた川久保玲、ヨウジヤマモトの山本耀司、漫画家の安野モヨコさん、女優の樹木希林さんら、多くの著名人を排出した「セツ・モードセミナー」がこの4月に閉校した。それに伴い、校長の長沢節(1917~99)が手がけた50年前のモノ・セックス(無性)によるファッション・ショーが再現された。

【写真特集】50年前の大胆な衣装を再現「モノ・セックス・モード・ショー」

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 剥き出しの素足を見せたガリガリの男性がミニスカートをはき、乳房を剥き出しにした女性モデルは颯爽と会場を歩いてみせる。

 50年前の1967年に「ワシントン靴屋」銀座本店のオープニングイベントとして長沢節が手がけた挑発的なファッションショー、モノ・セックス・モード・ショー」が、6月10日、文京区の弥生美術館で再現された。

 伝説のファッションイラストレーターの長沢節生誕100年の節目となる今年春、長沢氏が校長をつとめた美術学校「セツ・モードセミナー」が閉校。弥生美術館では、長沢の300点余りのイラストや愛用品を展示した企画展を開催。「ショー」も企画のひとつとして再現されたのだ。作品となる衣装は、学校で大切に保管されていたという。

 独自の美学を持つ長沢は、手や肘、腕をつなぎ合わせる関節美に魅了された。性差は小さいほど美しいとして、ガリガリに痩せたモデルを好み、ゴツゴツと骨ばった人物を描き続けた。

 弥生美術館の学芸員の内田静枝さんは、1967年の「モノ・セックス・モード・ショー」は男女差別や、米国のベトナム侵攻など強者による支配が根強く横たわる社会全体への反抗心を体現したショーだったと説明する。

 長沢自身もショーのパンフレットに挑戦の意図をこう書いている。

「女と靴下が強くなったとか、男の女性化とか大分騒がれているようですが、多分これはみんな男のゴマカシでしょう。男はまだ強いし、女はまだ1人では生きられません。(中略)男を弱くし、女を強くするために服装が果たす役割とは何でしょうか」

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