「僕自身、島根県という地方の閉鎖的な土地で育ちました。映画の舞台も小さな漁村で、閉鎖的な環境が偏見を助長する側面を描いていました。僕も、『オカマ』『ホモ』といった言葉で周囲に傷つけられた経験があります。18歳のときには自殺すら考えた。東京に出てきて、大学のLGBTのサークルに出会い、助けられた。人間の多様性を尊重してくれる環境に感謝しています」(大賀さん)

 早稲田大学は、性的マイノリティーの学生に対応するセンターをいち早く設置した。LGBTの学生が在籍する他の大学や学生からの問い合わせが、寄せられることもある。電通が2015年に行ったLGBTに関する調査では、成人約7万人のうち7.6%、つまり約13人に1人が該当すると答えたわけだ。もはや自分には関係のない世界の話ではないのだ。学外でも大賀さんに、「実は自分はLGBTなのだ」と声をかける人が増えたという。

「高齢の方から若い方まで、ごく普通の、という表現はおかしいですが外見からは判断できない方も多い。こんなにも数多い当事者がまだいるのだ、と改めて感じます」(大賀さん)

 いいことばかりではない。5月には、LGBTサークルと共同開催したイベント告知のポスターが破れ、侮蔑的な言葉が落書きされていたこともあった。「そんな(LGBT)こと、人に話すもんじゃない」と、言ってきた中高年の当事者もいた。

「それでも、LGBTへの理解や知識が広がることで、昔の自分のように、孤立から自殺を考える当事者がひとりでも減ってくれればと思います。日本の大学や企業に、情報発信や支援の輪が、はやく広がってほしい」(大賀さん)

(永井貴子)

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