現在、全国ツアーの真っ最中だが、コンサートではいつも、生まれ育った群馬県桐生市の八木節を披露する。

「ほとんどの外国人は、日本の都市と聞いて東京とか京都ぐらいしか思い浮かべないけれど、私が八木節を演奏することで、日本にも、大都会でも古都でもない、自然豊かな田舎町があると知ってもらえる。日本の民謡まで演奏できてしまうところが、ジャズの懐の深さです」

 まだまだやりたいことは山ほどあるけれど、音楽家として何か目標を定めているわけではない。ただ、人として成熟していきたいとは思う。

「ジャズという音楽からは、それを演奏する人の個性や存在感が、如実に音に表れます。哀しみ、暗さ、優しさなど、音楽家によっていろんな個性がありますが、結局、すべての人が命の輝きを表現していると思う。私も、花が咲く瞬間のような華やぎを、音楽で伝えられたら」

週刊朝日 2017年7月21日号