今年2月のダグル・シグルドソン新監督(中)就任会見で手を取り合う渡辺会長(左)と蒲生副会長(c)朝日新聞社
今年2月のダグル・シグルドソン新監督(中)就任会見で手を取り合う渡辺会長(左)と蒲生副会長(c)朝日新聞社

 ハンドボールの日本協会が異常事態だ。協会実務のトップである副会長兼専務理事と事務局長に対し、渡辺佳英会長(大崎電気工業会長)が評議員会で解任を求めたのだ。東京五輪まで3年、リーダーシップをとるはずの執行部の泥仕合が、この期に及んでスローオフとは。ああ、情けない。

 ハンドボールは28競技が実施された昨夏のリオデジャネイロ五輪で、日本勢が唯一男女とも出場できなかった競技だ。2020年東京五輪は開催国枠で、男子が32年ぶり、女子は44年ぶりに出場する。日本協会は全国に約10万人いる中高生を含めた登録者から年間一律500円を強化費に充てている。

 千載一遇のチャンスを生かすべく協会が一致団結して選手強化を進めている、はずだったのだが……。

 6月24日。東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンター会議室であった評議員会は役員改選が行われる予定だった。報道陣に非公開で午後2時から6時近くまで続いた。その場にいた記者は朝日、共同、時事、NHKの4社。主要競技団体の会議取材に比べると圧倒的少人数だったが、閉ざされた扉から出てきた蒲生晴明副会長兼専務理事(63)のやつれきった表情に一同、異変を感じとった。

 192センチ。「超大型プレーヤー」として名をはせ、1976年モントリオール、80年モスクワ(日本は不参加)、84年ロサンゼルスと3大会連続の五輪日本代表だった蒲生副会長は、今も変わらず大きな手で記者を振り払うようなしぐさをして、ほとんど口を開かずに立ち去った。

 その後、報道陣の前に引っ張り出された事務局長も、「えー、執行部の幹部に対する、解任動議が出ました。誰に出たかは言えないんだけど……」と奥歯にものが挟まったような物言い。「解任」を突きつけられたのは、まだ就任から1年しかたっていない蒲生副会長と事務局長、その人だったのだから、戸惑いは隠せなかった。事務局長は以来、協会に出勤停止となっている。

 一方、渡辺会長は今季で7期目(任期2年)の長期政権。突然の「解任要求」の背景には何があったのか。会長自身は協会を通じて「取材対応はしない」と今のところ、だんまりを決め込んでいるが、関係者によると、自らの頭越しに行われた事務局運営や不適切な会計処理などを問題視しているという。「蒲生副会長と事務局長が主導していた日本代表男子の国際強化試合中止の一件が大きい」という指摘も出ている。

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