より良く生きる秘訣は「畏るる」? 帯津良一が解く養生訓 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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より良く生きる秘訣は「畏るる」? 帯津良一が解く養生訓

連載「貝原益軒 養生訓」

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週刊朝日#健康
畏るるとは身を守る心法なり。(※写真はイメージ)

畏るるとは身を守る心法なり。(※写真はイメージ)

 最初は明るく前向きな人の方が病気の治りが早いだろうと考え、心理療法などにも取り組んだのですが、失敗でした。明るく前向きな人は、病気が回復に向かっているときはいいのですが、いったん調子が悪くなると、ガタッと落ち込んでしまうのです。そういう患者さんに何人も接するうちに、人間は本来、明るく前向きにはできていないのだということに気づきました。人間の本性をよく見つめていくと、みんな生きるかなしみを抱えているのです。

 そして、この生きるかなしみこそが、天の摂理を畏れることにつながっているのです。明るく前向きに自分の思い通りに生きている人は、天の摂理とは無関係です。自分で何でもできるのですから。でも本来、人間はそうは生きられない。だとしたら、生命の根源である天の摂理を畏れ、謙虚に生きていくことになるのではないでしょうか。

 益軒は「朱子(しゅし)、晩年に、敬の字をときて曰(いわく)、敬は畏の字これに近し」(同)とも語っています。南宋の朱熹(しゅき)が体系化した朱子学には「居敬(きょけい)」という慎んで徳を積む修養法があり「敬」を重んじています。この敬について朱熹は晩年、畏という文字の意味に近いと解釈していたというのです。

 私は生命の根源である天を畏れ、人のかなしみを敬(うやま)うことによって、温(ぬく)もりある本当の医療ができると考えています。私事で恐縮ですが、私の病院の「帯津三敬病院」の敬の字にはその思いを込めているのです。

週刊朝日 2017年7月14日号


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帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など多数の著書がある

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