そこで足立先生が推奨するのは、「後食べ」と「足し算食べ」という食べ方の工夫だ。「後食べ」とは、おかずを3分の2くらい食べてから主食を食べる食事法。主食は好きなだけ食べていいが、後で食べると、おのずと少量で満腹になる。そして、食後の血糖値の上がり方が緩やかになる。仮に血糖値が急上昇すれば、それを抑えるためにインスリンが過剰に分泌し、血糖値が急降下する。これを「血糖値スパイク」という。インスリンは、血液中の余分な糖を脂肪に変えることで血糖値を一定に保つ働きをもつ。つまり、食後血糖値が急上昇すると脂肪が蓄積されやすくなるのだ。

 その点、「後食べ」なら血糖値スパイクを抑えられる。おかずに含まれるアブラやたんぱく質は、糖質よりも消化に時間がかかるからだ。食べた物が胃から小腸へ移動する時間は、砂糖が10分程度で、でんぷんが1時間くらい。空腹時に砂糖たっぷりの清涼飲料水を飲めば、即効で血糖値が跳ね上がるというわけだ。

 一方、たんぱく質は2、3時間、アブラは4時間以上かかる。たんぱく質やアブラを先に胃の中に入れておけば、後から食べた糖質と混ざって緩やかに吸収される。また、食物繊維はほとんど消化されず、糖質の吸収スピードを抑える働きがある。だからおかずを先に食べることが重要なのだ。と、ここまで聞いたところで、一つの疑問が生じる。これは最近流行した「食べ順ダイエット」と同じではないか?

「あれは最初に野菜を食べる方法ですが、それだけでは効果的とは言えません。野菜と言うと、多くの人はレタスやキュウリ、キャベツのサラダなどを食べればいいと思いがちですが、それでは食物繊維が足りないのです」(足立先生)

 野菜を先に食べるなら、食物繊維が豊富な緑黄色野菜でなければならない。たとえば青菜やキノコの炒め物など。根菜は不溶性食物繊維なので効果が薄く、糖質も多いからNG。野菜ならなんでもいいというわけではないのだ。

 それより重要なのは、アブラを先にとることだとか。サラダならドレッシングは必須で、ノンオイルドレッシングはNG。たんぱく質も消化に時間がかかるので、肉や魚を先に食べるのもいい。

 もう一つの「足し算食べ」は、アブラや食物繊維など、必要なものをプラスする食べ方だ。

「糖質や脂質を制限するのではなく、うまく付き合おうというのが『足し算食べ』の考え方です。あれもダメ、これもダメと『引き算』するよりも、良いものをプラスするほうが長続きします」(同)

 実際、ご飯だけを食べたときよりも、ご飯にオリーブオイルをプラスしたときのほうが食後血糖値の数値が低く、下がり方が緩やかだ。(伊藤あゆみ)

週刊朝日 2017年7月14日号より抜粋