木村院長は、労働者健康安全機構が今年3月発表した「職場高血圧に関する調査研究」の代表者を務めた。その結果が興味深い。

 対象者は、夜勤がなく土日休みで平日働く65歳未満の207人。休日、月曜日、金曜日の各日4回(起床時、午前10時、午後4時、就寝前)、血圧と心拍数を計測した。すると、月曜日は、ほかの日と違う傾向がはっきりと表れた。

 注目したのは、収縮期血圧と心拍数を掛け合わせた「ダブル・プロダクト(W‐P)」の値。木村院長は「心臓にかかる負荷のことで、血圧単体よりも心血管疾患に直結するバロメーター」と解説する。

 脳卒中や心臓病の発症に関係すると言われるこの値が、月曜午前になると大きく上がっていることがわかった。

 心筋梗塞や脳梗塞などの心血管事故が月曜午前に多く起きることは、以前から知られていた。しかし、原因がよくわからなかった。今回の調査結果から、W‐Pの上昇が心血管事故に関連することが示唆された。

 先行き1週間をにらんで仕事の予定を考える。月曜午前のそのストレスが、W‐Pを上昇させている可能性がある。木村院長が、スロースタートの重要性を訴える理由だ。

 木村院長は月曜日の仕事量を抑える重要性に触れつつ、「(2月に始まった)プレミアムフライデー以上に、重要かもしれない」と指摘する。

 実際に、「月曜日対策」に動いている企業もある。

 通販サイトなどの運営会社「シー・コネクト」(東京都)は2月から、毎月末の月曜日を「プレミアムマンデー」として、社員向けグルメイベントを始めた。

 昼休みに社員が集まり、出身地のご当地グルメを食べたり、その地域のクイズを楽しんだりする。ご当地グルメの食費は会社が負担。参加した社員の半数以上が「月曜日がいつもより楽しくなった」と話しているという。

 同社は通販事業という特性上、顧客対応や商品出荷などで、金曜日の一斉早帰りが難しい。そこで、「月曜日をいつもよりちょっと楽しみに思える日にしたい」と取り組み始めた。
「オフ」と「オン」の境目の月曜朝に、自宅とも職場とも違った非日常の場を設ける手もある。

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