あらま。結婚した相手も時と共に「あなたのことはそれほど(あなそれ)」になり、やがて「あなたのことはどれほども(あなどれ)」の境地に辿り着き、最後に女たちは離婚を考え始める。これ、女心の三段活用とでもいうべきか。

 実際、結婚20年を超える夫婦の離婚(=熟年離婚)は著しく増加している。厚生労働省の平成27年(2015年)人口動態統計によると、結婚20年以上の夫婦の離婚は3万8644件。1985年と比べると熟年離婚件数は約2倍にふくれ上がっているのだ。

 夫婦問題研究家でライフアップ・カウンセラーの岡野あつこさんは言う。

「今や日本人の女性の平均寿命は86.99歳。還暦過ぎても20年以上生きるわけです。そうなると、やはり夫との将来に、共に仲良く生きていく絵図がきちんと見えていないと不安ですよね。いつまでたっても自分の幸せが見えてこないならば、もらうものをもらって新しく生き直そう。そんなバイタリティーあふれる50代、60代の女性たちが増えているのだと思います。一緒に生きていくパートナーを代えてもいい。一人で元気に生きていくのもいい。世間体を気にして無理な我慢を続けるよりも、女性が自分にとって“より楽しい人生”を追求する時代なのかもしれません」

 離婚の原因も様々だ。

「従来よくあげられた浮気、夫の暴力、不労、借金といった定番的な離婚原因では片づけられなくなっているのが現実です」(岡野さん)

 夫は会社員、妻は専業主婦という夫婦の場合、離婚の危機は夫の定年退職時に訪れることが多い。弁護士の比留田薫さんは、こう指摘する。

「もともと性格も趣味も合わない夫婦でも、子どもが小さいときは、“子ども”という共通の話題があるのです。しかし子どもも大きくなり、やがて独立して家からいなくなる。そこに、定年退職した夫だけが毎日家にいるようになると、それまで表面化していなかった問題が一挙に噴出してくるのです。一緒に過ごす時間が急に増えても、会話が何も続かない。行動パターンもまったく違うから、ささいなことで喧嘩になる。するとますます会話がなくなってしまう。そんなことを繰り返していると、自分たちは果たして本当に共に生きていく意味があるのか、夫婦で問い直さざるを得なくなるのではないでしょうか」

週刊朝日 2017年7月7日号より抜粋