作家・室井佑月氏は、「共謀罪」法案の強行採決に苦言を呈す。

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〈日本の民主主義が殺された。殺人犯は自民、公明、維新だ。委員会の委員長が野党で、審議引き延ばしを画した場合のみ許される禁じ手・中間報告を与党公明の委員長の下で行うとは。憲法無視そのものだ。公明は死んだ。悲観するな。都議選でゾンビ公明を壊滅させる純な心が残っていれば蘇えれるよ〉

 これは元衆院議員で、公明党の副委員長などを歴任した二見伸明さんが6月15日にTwitterに上げた言葉である。

 二見さんは公明党の議員であったから、現在の公明党に対して厳しい。

 わかるよ。テレビで最近の読売新聞批判をしたら(たぶん、そこはカットされるだろうけど)、その場にいた人々にたしなめられた。が、誰にどうたしなめられても、構わなかった。マスコミ業界の末端にいる人間として、そこは絶対に譲れないところであったから。

 あたしが学生だった頃、文系の頭脳優秀な者が大手の新聞記者を目指した。優秀でもなんでもなかったあたしにとって、彼らは憧れの人たちだった。

 だった、と書くのは、今は違うからだ。権力の監視役である正義のマスコミが、正義を忘れ、権力の下請け機関になっていることが、どうしても許せない。

 ま、あたしの話はどうでもいい。二見さんはTwitterで、つづける。

〈公明は完全にいかれている。与党委員長の下での中間報告・本会議採決というやり方は徹底的に議論する議会政治の原理を否定するもので、典型的なファッショそのもの。平和と福祉の公明は薄汚れた乞食のような右翼に変身してしまった〉

 
 二見さんの言葉は、とてもわかりやすい。

 現政権の下駄の雪の話は置いといて、15日、中間報告からの本会議採決というやり方で、この国の民主主義は殺されたのだと思う。あたしたちは、民主主義が殺されるところを目撃した。

 担当大臣でさえ、答弁ではいうことがコロコロ変わる「共謀罪」。衆議院のときは、まだ30時間も話し合ったという建前があった。

 そりゃあ、何時間審議しようが関係ない。担当大臣でさえ明確にどういうものか答えられないクソ法案なのだ。でも、法を作った側が、その法について説明しなくてはという最低限の道徳心はあったはず。

 けれど、それすら無くなってしまったようだ。なぜ、「共謀罪」の制定にこんなに焦る?

 議論すればするほど、この法律は、テロなど関係なく、権力に歯向かう者を取り締まるものだと国民にバレるからか? それとも、ボロボロと新たな事実が浮かび上がってくる加計学園問題で、このまま総理の関与を否定しつづけることは困難だと考えたからか?

 どちらにしても、国民不在の考え方だ。二見さんがいうように、典型的なファッショ政治だ。

 とにかく、この横暴な政権に慣らされちゃいけない。次の選挙まで、今回起きたことを忘れちゃいけない。

週刊朝日 2017年7月7日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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