放送作家・鈴木おさむ氏の『週刊朝日』連載、『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は「イクメン」をテーマに送る。

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 先日、NHKのニュースを見ていてビックリした。内閣府が「おとう飯(はん)キャンペーン」なるものを始めると言っていたのだ。そこで男性アナウンサーの口から「イクメン」という言葉が数度繰り返され、そして「お父さん」と「ご飯」をひっかけた「おとう飯」という言葉を超マジメに言っていて爆笑した。ようは、お父さんももっと家事に参加しようということ。そのために内閣府がここぞとばかりに考え出したのが「おとう飯」。料理なんかできないと思わずに、手間をかけず、見た目が悪くとも気にせず、お母さんの代わりにもっとご飯を作ろうじゃないかということだろう。

 僕が1年育休を取らせてもらったときに、メインでやっていたのが料理。育児で追い込まれる母親は、自分のご飯が後回しになる。海苔や納豆、ふりかけとご飯で済ます人が周りには多かった。だから僕は妻と自分のご飯を毎日作った。僕は学生時代居酒屋の厨房で働いていたので、料理に対しての勘が悪くないし嫌いじゃない。だから楽しかった。僕という人間に合っていたのがご飯を作ることで、結果妻もそれを望んでくれた。これ、需要と供給が合ってるから良かったが、例えば妻がご飯を作られることを望まなければ、僕がそれをやったとしても夫婦間のストレスになるだけ。奥さん一人ひとり、旦那さんにやってほしいことが違う気がします。もしかしたら洗濯かもしれないし、掃除かもしれない。うちの妻はめちゃくちゃ奇麗好き。だから、僕が料理を作ることには感謝してくれたが、後片付けを僕がやると妻の納得するものにならない。二度手間だと怒られる。だから僕は料理を作るけど、後片付けはやらないというスタンスに落ち着いた。これは妻と話し合った中で役割が作れたからだと思う。大事なのはその夫婦ごとに話し合って、もし旦那さんが家事に参加するなら何をしてほしいか?という会議をすることじゃないか? これをやっていかないと結果無駄になる気がする。

 
 と書いてきたが、この「おとう飯」について、一番良くないのは、ネーミングだと思う。

 ネーミングにダジャレを使う手法は危険と隣り合わせ。ネーミングがダサかったり嫌悪感を持たれると、まず流行らない。

 そもそもイクメンという言葉自体が、男性に好かれてないことに気づいてない人が多い。我ら団塊ジュニア世代の男子が特に嫌っている。よく考えてほしい。イクメンとは、「イケメン」のパロディー的なものなのだ。ベースにイケメンがある。男子はイケメンが嫌いだ。というか嫉妬する存在なのだ。世の中の男性のほとんどはイケメンじゃない。なのに、そんな「イケメン」と引っ掛けられた言葉を使って、そもそもハードルが高い育児への参加を呼びかけるのが間違ってると思う。もっとマジメでちゃんとしてる言葉でいいんだと思う。

 まあ、とにかく、「イクメン」とか「おとう飯」の前に大事なのは夫婦で話し合いを持つこと。そうだ、これ、どうだ? 「夫婦で話し愛キャンペーン」。絶対だめだ……。

週刊朝日  2017年7月7日号

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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