御厨貴・東大名誉教授(左)と松原隆一郎・東大大学院教授(右)(撮影/写真部・岸本絢)
御厨貴・東大名誉教授(左)と松原隆一郎・東大大学院教授(右)(撮影/写真部・岸本絢)

 森友、加計“爆弾”の直撃に慌てた安倍政権は、「共謀罪」法の審議もロクにせず、国会の幕を閉じた。若手議員らの不祥事も相次ぎ、頼みの支持率は10ポイント程度落ち込んだが、攻め手を欠く野党も冴えない。「国会通信簿」でおなじみの松原隆一郎・東大大学院教授(社会経済学)と御厨貴・東大名誉教授(政治学)に、小池小百合氏の動きと自民党の今を聞いた。

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松原:都議選が告示され、自民党対都民ファーストの会の激突の様相を呈していますが、これだけ(自民など他党から)抜けて、勝ち馬(都民ファ)に乗ろうとする選挙は見たことがない。菅(義偉官房長官)さんは、そもそもどうして党内でうまく小池(百合子東京都知事)さんを飼い殺しにしなかったのか不思議です。要職を外し続けた結果がこれですから。

御厨:去年の都知事選で「絶対に自民党候補にしない」と言って、結果的に負けてしまいましたからね。

松原:安倍(晋三首相)さんは、ゆくゆくは小池さんが国政に戻れば、改憲で組めると静観しているんでしょうけど……。

御厨:安倍さんはそうでしょう。小池さんは二階(俊博自民党幹事長)さんとの関係も究極的には悪くないでしょうしね。

松原:小池さんは、今となっては将来の絵を描いていると思います。自民党内でやりがいある役職についていたら、それで完全燃焼したかもしれないのに。飛び降りる覚悟を決めさせてしまったのは、菅さんのミスだと思います。今年、希望の塾に呼ばれて無電柱化について講演した際、小池さんに「寝ていないでしょう?」と尋ねたら、「今、すごく幸せですよ」と言っていました。日々厳しい決断を迫られても、多幸感が湧き出す感じで。自民党の中では浮いてましたからね。

御厨:でも、党として彼女をどこにも持っていくところがなかった。小池さんとしても知事選が千載一遇のチャンスだったと思います。今年1月、「時事放談」に小池さんが出演した際、野田聖子・元自民党総務会長と一緒だったのですが、ほとんど小池さんが仕切ってやったんです。終わってから、「MC経験あるから、さすがですね」と僕が言ったら、小池さんは「それは失礼ですね。私はプロデューサーやってたのよ。MCじゃない」と切り返されました(笑)。彼女は本気でプロデューサーとして、今、小池劇場を演出していますね。

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