岡野さんは、“豊かで幸せな老後”への執着が女性を後妻業に駆り立たせる面もあると強調する。

「これまで苦労してきた人ほど、最後は豊かに幸せに暮らしたいと願うもの。病気になっても安心なくらいのお金を、何がなんでも手元に置いておきたいと考える女性は珍しくない」

 漫画家の内田春菊さんは、「男性が女性を養うのは当然」という社会に浸透する考えが、後妻業を成り立たせていると分析する。

「堀江貴文さんが著書の中で『人の心は金で買える』と書いているように、男性にとっては、『資産があるからモテる』ということは、ある種のステータス。女を養うことが、男の価値をはかる材料という面もあるのです。後妻業は、その考えを逆手にとったビジネスとも言えるかもしれません」

 筧被告の裁判は、判決までの実審理期間が135日という異例の長さで行われる。地元紙によると検察側の証人は現時点で、筧被告の見合い相手も含め53人が呼ばれる見込みだという。一部遺族も被害者参加すると見られるが、冒頭の被害者息子は首を横に振った。

「裁判も見たくない。残された者も周囲の好奇の目にさらされて、生き地獄や」

 後妻業をめぐる甘くて苦い真実。関係者のやりきれない思いが交差する法廷が、幕を開けた。

週刊朝日 2017年7月7日号