週に5日をアルバイトにあてるが、残り2日に寺の仕事は、ない。同じことの繰り返しに「泣けてくることもある」が、今はただ、寺の存続のためだけに生きる毎日だという。住職は覚悟もしている。

「なんとかお寺を残したくて頑張っているけど、誰も助けてくれない。私の代で終わりだろうね。(集落にいる)おばあちゃんたちが亡くなれば、お寺を残す意味もなくなる」

 檀家が住職に見捨てられるとどうなるのか。茨城県石岡市にある真言宗・善光寺は、住職不在で、檀家が支えている。室町時代に建立された歴史ある寺院で、楼門は国の重要文化財に指定されている。しかし、善光寺は別の理由で有名になった。

 わらぶき屋根の立派な楼門をくぐり石段を上っていくと善光寺があるのだが、その姿に驚かされる。瓦屋根の一部は朽ち、柱は倒れている。屋根の間からは草木が生え、人の手が入った気配がなく、まるで廃虚だ。その独特な雰囲気から、今では映画やドラマのロケ地として有名になってしまった。

 善光寺の檀家総代のうちの一人である67歳の男性は心境をこう話す。

「有名な時代劇やテレビドラマの舞台として撮影に使われて、善光寺が有名になったのはうれしいのですが、“廃虚”として有名になっているのは複雑です。お金がないということを世間にさらしているわけですから」

 善光寺の檀家は現在も70軒ほどあるというが、住職もいない寺にお布施は集まらないのだという。住職がいないとはどういうことなのか。長年この地域に住み、檀家として善光寺を支えてきた83歳の男性は言う。

「明治末までは住職がいたんです。その住職が寺を捨て逃げ出したんですよ。食っていけないってね」

 この男性によれば、100年近く無住職の状態が続き、今では近隣の同じ宗派の寺の住職に兼務してもらっているという。

「いまや檀家の中には何とか直したいって人よりもあきらめている人のほうが多い。私も年齢的に力になるのも難しい。若い世代が頑張ってくれないと……」

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