ベンチで浮かない表情を見せる高橋由伸監督(c)朝日新聞社
ベンチで浮かない表情を見せる高橋由伸監督(c)朝日新聞社

「第一報を聞いたとき、予想以上に早かった、という印象でしたが、よく考えればやっぱり、とも。第一報は、株主総会と取締役会の前日でしたから。80年を超えるジャイアンツ史の中での最多連敗記録を更新してしまったわけで、何かしなければいけなかった、ということでしょう」

 6月8日に球団史上初の13連敗を喫した5日後、巨人のGMは堤辰佳氏(51)から鹿取義隆氏(60)へと代わった。冒頭の言葉は、その一報に際して長年巨人を取材してきたベテラン記者が抱いた感想だ。なぜ「やっぱり」なのか?

「本人は現役続行を希望していたはずの高橋由伸を監督に就任させた経緯から、球団は高橋監督を批判しづらい。一方で、監督就任1年目だった昨季の戦いぶりがさえなかった。だから今年4月、鹿取さんがGM特別補佐というポストに就いたとき、何かあったときの責任を取らされるのは堤GMで、後任に鹿取、というシナリオか?とささやかれてたんです」(ベテラン記者)

 球団役員の交代は、現場にどれだけ響くのか。

「堤さんは面倒見が良く、プライベートでのもめ事を処理してもらったような選手も少なくない。選手との距離感が近い人でしたから、現場では結構ショックを受けた人もいたと思います。少なくとも由伸監督は心穏やかではなかったでしょうね」(同前)

 堤氏は慶応大学野球部OB。高橋監督の先輩で、その関係性は濃いものだったという。今回、先輩が責任を一人でかぶるかたちになり、高橋監督の反応が気になるが、嘆いたとか、悔しがったとか、そういう話は漏れてこない。ただ……。

「実は最近、『監督に何かあったときは、俺も……』というニュアンスの言葉を由伸監督と仲のいいコーチが口にしているとか。だから、今シーズンの成績がこのまま低空飛行で終わったら、球団が『辞めろ』と言わなくても、監督のほうから『辞める』と言いだす可能性もないとは言えない、と見られています。由伸監督は『暗い』とファンに不人気な点も、球団の営業的には不安材料でしょうから、その展開は、やぶさかではないだろう、とね」(スポーツ紙デスク)

 皮肉なことだが、13連敗という歴史的な体たらくによって久方ぶりに世間の注目の的になっている巨人。GM交代劇後の4試合は3勝(16日現在)と、刺激が効いたかに見えるが。

「若手育成や首脳陣の判断力など根本的な課題は残ったまま。盛り返していくと思わせる要素が見つかりません。GM交代という一大事より効き目の期待できるカンフル剤も、もうありませんしね」(同前)(黒田 朔)

週刊朝日 2017年6月30日号