都知事選以来、トレードマークとなった「百合子グリーン」の衣服や持ち物を身に着けた熱狂的な支持者の数も今回は少なく、演説後に「もう終わり? あっさりだったね」とつぶやく聴衆もいた。

 注目される築地市場の移転問題でも、早期移転を主張する自民との違いは鮮明ではない。小池氏は17日に築地を訪れ、業者に謝罪。「AかBかではなく、これまで育ててきたブランドをどう守っていけるか、鳥の目で決めたい」と語った。20日に小池氏が発表した内容は、豊洲への市場移転は実行して、5年後を目途に築地を再開発するという“玉虫色”基本方針。「築地は守る、豊洲を生かす」案だというが、細部は詰められておらず実現可能性は未知数だ。豊洲移転を求める自民との争点も明確ではなく、「小池劇場」はいまいち盛り上がりに欠ける展開となっているのである。

「今のところ聴衆の反応は悪くないが、『みんなの党』の全盛期(11~12年ごろ)に感じた“風”には及ばない印象。『ふわっとした民意』をどこまで取り込めるかは読めない」(都ファ陣営の区議)

 満を持して自民に離党届も出し、絶好の攻め時のはずなのに、まるで安倍首相を「忖度」したかのような、小池氏のソフト路線。そこにはどんな含意があるのか。ある政府関係者はこう語る。

「小池氏にはポスト安倍への色気が十分あると見ている。今後、国政政党を立ち上げても安倍政権とは対決姿勢をとらず、維新のように第三極的協力関係を模索していくのでは。東京五輪までは政府の協力を得つつ、知事として派手な政策でスポットライトを浴び続ける手法です。一方の安倍政権も、改憲勢力として小池一派を取り込みたい。維新がそろそろ、賞味期限切れでしょう。憲法改正を国民投票で否決されたら内閣総辞職に直結するので、味方の数は多ければ多いほどいい。安倍さんと小池さんは日中の『戦略的互恵関係』に似ている。小池氏が提出した離党届も二階(俊博)幹事長は保留にしたままです」

 つまり、小池氏にとっては都議会での勝利はすでに織り込み済み。本当の目的は国政進出と、首相の座だというのだ。実際、都ファは今春、党内に「国政研究会」なる勉強会を立ち上げており、都議選後に本格的に国政進出を目指すとも観測されている。

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