塾生の反乱に小池都知事の心境はいかに?
塾生の反乱に小池都知事の心境はいかに?
希望ファーストの会を立ち上げた齋藤一恵さん(撮影・上田耕司)
希望ファーストの会を立ち上げた齋藤一恵さん(撮影・上田耕司)

 安倍自民党が森友、加計学園問題などで失速する中、追い風が吹く小池百合子東京都知事率いる「都民ファーストの会」(以下は都ファ)に問題が持ち上がった。

 都ファは都議選に48人前後の公認候補を擁立する予定だが、公認選考から漏れた「希望の塾」(小池氏が主宰する政経塾)の塾生たちが無所属で立候補すると訴えているのだ。

「希望の塾」には約4 千人が受講し、昨年12月には、小池氏は塾生から都議選の候補者を擁立する考えを示していた。

 結果的に公認されなかった齋藤一恵氏(48)、土居範洋氏(35)、宮本しゅんま氏(26)の3人の塾生たちが6月13日、都庁で会見を開き、「『都民ファーストの会』からは公認されなかったが、都議選に立候補します」と出馬表明。「都ファの選考過程が不透明だった」などと訴えた。

 齋藤さんは塾の1期生で、シンガポールで12年間、人材育成会社を経営していたが、ネットで希望の塾の創立を知り、「小池知事のビジョンに共鳴した」という。シンガポールから応募書類を郵送し、飛行機に乗って、希望の塾の授業を受け、またシンガポールに戻るという生活を送った。

 今年1月、東京・池袋で都議選に擁立する候補者を育成する「都議選対策講座」の受験が行われ、約1600人の受験者の中から約300人まで絞り込まれた。

「合格通知が来たことがきっかけで、シンガポールの仕事を辞めて3月初め、帰国しましたが、次の面接で落とされてしまった。面接時間はたったの10分。それくらいで何がわかったのでしょうか」(齋藤さん)

 公認はとれなかったが、都議選に出ようと齋藤氏は6月初旬、「希望ファーストの会」なる政治団体を立ち上げた。名前が都ファと似ていることについてこう説明した。

「なんとかファーストというのはトレンドなので。メンバーはまだ私1人ですが、政治団体を持っている方が、無所属よりは活動の幅が広がります」

 同じく希望の塾の塾生で、会社員の土居範洋氏(34)は南多摩から、宮本しゅんま氏(27)は荒川区から無所属で出馬する。 
 宮本氏はこう振り返る。

「都議選対策講座の筆記試験はかなり手応えがあり、自信があったんですが、『このたびは残念ながら不合格となりました』という通知が送られてきました。試験の採点も公表されておらず、疑問を持っています」

 選考のプロセスが不透明とも訴える。

「公認されたのは、知名度、お金、または経歴のきらびやかな人ばかり。毎回、講義を受けていた塾生の中からは何人が選ばれたのでしょうか」

 土居氏は都ファが「自民党の旧態依然とした地盤、看板、鞄の3ばん方式と同じやり方をしている」と批判した。そして塾の収支を開示していないことにも疑問を抱いたという。

「塾の公式ホームページで何人かが、『収支報告を公開してください』と呼びかけをしているにもかかわらず、公表しない。小池知事のいう情報開示、透明性からはかけ離れているのではないでしょうか」

 ある塾生は「公認に選ばれた女性は、幹部の好みのタイプの女性が多いですね」とも証言する。

 塾生からのさまざまな指摘に関し、都ファ事務局はこう回答した。
          
「個別の事例について論評する立場にはありません。試験の採点結果についてはお答えしておりません。(略)希望の塾は都ファが運営する事業の一部。都ファは、政治資金規正法により政治団体として政治資金収支報告書を作成し、東京都選挙管理委員会に提出することが義務づけられており、同法の規定に基づいて適正に開示されています」

 都ファと希ファの戦いはいかに。

(本誌・上田耕司)

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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