8試合続けてトップ10から漏れているゴルフの松山英樹選手(25)。全米オープンが目の前に迫った時期とあって不安視されているが、丸山茂樹氏の分析は?

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 海外メジャー第2戦「全米オープンゴルフ選手権」(6月15~18日、米ウィスコンシン州エリンのエリンヒルズGC)が迫ってきました。一方で松山英樹の調子が上がってこないと心配する声も耳に入ってきますけど、僕はあまり心配してないんです。

 英樹は2月のフェニックス・オープンで2連覇して以降、8試合続けてトップ10に入れない状況で全米オープンを迎えます。彼と話をしてないから、どんなことに悩んでるのか明確なことは分からないですけど、「いろんな怖さも出てきた」という趣旨のコメントがありました。米ツアー4年目と経験値が上がってきたからこそ感じることが、英樹のゴルフを邪魔してるんでしょうね。たとえばショットの調子が悪くて、修正のために練習をする。それでも直っていかない。きっと、そういった「これまでだったら~なのに」という思いの繰り返しなんでしょう。そしてまた、ストレスやイライラがプレーの邪魔をする。

 そうやって空回りしてるだけだと思うんです。だから心配してません。これがね、もっと成績が落ち込んでるんだったら、「大丈夫かな」「メンタルやられちゃってんじゃないかな」なんて思うんですけど。全米オープン前最後の試合も出入りの激しいゴルフでしたが、最終日に2アンダーで回って65位から45位まで上げましたから。4日間のリズムが悪いだけだと思うんです。

 最近、世界ランク1位を経験したジョーダン・スピース(23)もジェイソン・デイ(29)も、いつも絶好調なわけじゃない。テニスの錦織圭君(27)も、世界4位までいったあと、少し苦しんでるじゃないですか。9位まで落ちて。全仏オープンでも苦しみながら頑張ってベスト8までいった。英樹にとってもそういう時期だと思うんです。1カ月後はどうなってるか分からないですよ。

 
 僕は24歳で迎えた1994年のシーズンに一番苦しんだんです。93年に日本ツアーで初優勝したんですけど、練習のしすぎで腰痛になって。94年は何をやってもダメで、米ツアーに本格参戦する前年の99年まででいうと、そのシーズンだけ優勝できなかった。そのとき「無理な練習はいけないな」とか「ケアも大事だな」って、いろんなことを考えて次の年からよくなったんです。シーズンを通じて考えたら、英樹も何一つ悪いことはないんですよ。2回優勝して、賞金ランキング2位、世界ランキング4位。いいじゃないですか、小休止ですよ。

 さて今年の全米オープンは2006年にできたばかりのエリンヒルズというゴルフ場が舞台です。僕はプレーしたことないですけど、アメリカでは珍しいリンクスコースみたいですから、風が強く吹くのかもしれない。トラップも多くて非常にタフなコースだと聞いてますね。

 フィル・ミケルソン(46)が全米オープンの初日にある娘のハイスクールの卒業式に出るため、欠場を考えてるようですね。これまでも彼は家族優先で行動してきてますから。でも第1ラウンドの開始が大幅に遅れることがあれば、プライベートジェットでカリフォルニアからウィスコンシンまで駆けつける、と。彼は自分で飛行機の操縦もするし、コースも事前にチェックしてあるはず。そのへんは用意周到ですよ。

週刊朝日  2017年6月23日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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