ヘヴィ・メタルの始祖? “まもなく73歳”レイ・デイヴィスの10年ぶりの新作を聴け (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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ヘヴィ・メタルの始祖? “まもなく73歳”レイ・デイヴィスの10年ぶりの新作を聴け

小倉エージの「知新音故」

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レイ・デイヴィス

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レイ・デイヴィス『アメリカーナ』(ソニー・ミュージック SICP―31058)

レイ・デイヴィス『アメリカーナ』(ソニー・ミュージック SICP―31058)

 ザ・キンクスを率いてきたレイ・デイヴィスの10年ぶりのニュー・アルバム『アメリカーナ』。キンクス・フリークだけでなく、マニアックなロック親父の心をくすぐる快作だ。

 ザ・キンクスと言えば「ユー・リアリー・ガット・ミー」。パワー・コードによるギター・リフが繰り返され、ハード・ロック、ヘヴィ・メタル誕生のきっかけになったとも言われる名曲である。1964年、同曲や「オール・オブ・ザ・ナイト」のヒットで一躍脚光を浴びた後、アメリカに進出。ザ・ビートルズ、ザ・ローリング・ストーンズに次いで、アメリカでの成功は約束されたも同然だった。

 だが、65年のアメリカ・ツアーの際、アメリカの音楽家連盟から4年間、アメリカ国内での演奏活動を禁止されるという憂き目に遭う。音楽家連盟はその理由を明らかにしなかったが、それまでにザ・キンクスはメンバー同志のいさかいなどステージ上での乱暴な振る舞いが問題視されていたことや、TV収録の際のスタッフとの揉め事などがその要因となったようだ。

 以後、活動の拠点としたイギリス・ロンドンの市井や日常生活を背景に、ユーモアと皮肉を交えた独特の人間観察や社会風刺にとんだ作品を相次いでヒットさせて、アメリカでもカルト的な人気を獲得。日本のキンクス・フリークにも、当時から彼らを支持してきたという筋金入りが多い。

 コックニー訛りむき出しで歌うレイ・デイヴィスだが、今回の『アメリカーナ』は、自身のアメリカとの関わりがテーマ。2013年に出版した同名の回想録を執筆する際に作った曲を収録している。

 レイ・デイヴィスは本作のライナー・ノーツに「古い映写機が映し出す、粗いモノクロの映像――幼い頃に観たカウボーイやネイティブ・アメリカン、スーパーヒーロー達の姿がすべての始まりだった」と記している。

 アルバム冒頭の表題曲「アメリカーナ」は映画との出会いをきっかけに始まったアメリカへの憧れを歌った作品。のどかなカントリー・ロック調の演奏をバックにした落ち着きのある堂々とした歌声には、かつての思い出を愛おしむような懐古的な趣もある。もっとも、続く「ザ・ディール」では虚飾に満ちたハリウッドの様相を皮肉たっぷりに描き、それを享受する“ふざけた億万長者”ぶりを自嘲気味に演じてみせる。まさに本領発揮というところだ。さらに、物欲を満足させてくれる快適な現代生活の落とし穴を風刺した「ポエトリー」、“世界を変えなければ”と訴えかけた硬派なメッセージ・ソングの「チェンジ・フォー・チェンジ」といった作品もある。


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