「気に入られようと話を合わせる性格で、つい演技して、本来の自分を見せられなかった」。初対面から結婚のフィルターをかけて相手を見てしまった、と明石さんは打ち明ける。

「33歳の壁」にあおられるように入会した結婚相談所で、男性たちに閉口したのは、食品メーカー勤務の梅林真由さん(仮名・33歳)。職場はすべて既婚男性。そこで、ある恋愛セミナーの主催者から紹介された東京都港区の結婚相談所に登録したところ「子供が欲しい男性にとって、あなたはギリギリだから」とせき立てられた。セミロングの毛先をカールして、花柄のワンピースに、袖を通さずに羽織るだけのカーディガンという清楚(せいそ)なお嬢様をイメージしたファッションを強いられ、お見合い写真を公開した。ところが申し込んだ男性はほぼ40歳以上。7歳以上も年上であれば豊かな人間性を兼ね備えているだろうと期待した梅林さん。だが精神的にとてもつらくなったという。

「星野源に似た42歳の国家公務員の男性は、実家住まいで趣味は鉄道と、ここまでは普通でしたが、いきなり激しい口調で仕事の愚痴を言いだして。我慢して聞いてあげたら、だんだん上から目線の物言いになり、しまいには私を上から下までなめるように見て、『君はかわいいじゃない』って。ゾッとしました。しかも初対面なのに『君はいつ結婚したい? 僕はこの年齢だから早くしたい』と、私の気持ちなど無視。女性と付き合ったことがないんでしょう。あきれました」

 そのほか東大卒の38歳、研究者で年収700万円以上のバツイチ男性は、前妻と別れた理由を「今でもわからない」と見合いの席で口にしてから、梅林さんが1日メールを返さずにいると、次に会う予定を問い合わせるメールを何通も送ってきた。また43歳で年収1200万円の銀行員は、デート場所に指定してきた高級レストランで想定外のワリカン、さらに2次会のバーでもワリカンだった。嫌われた、と落ち込んでいると、こちらの感情を察することなく、一方的に自分の趣味を語るメールが大量に送られてくる。その身勝手さに、怒りを通り越し、こんな人と見合いしたのか、と傷ついた。

「高学歴で高収入でも、コミュニケーション能力がなさすぎる男性ばかり。入会金10万円、月会費2万円をまるでどぶにでも捨ててしまったような気持ちです」(梅林さん)

「33歳の壁」は結婚相談所という限られた世界だけではない。東京都江東区の美容サロンオーナーで年間100人ほどの30~40代の男女から結婚の相談を受けるという米倉晶子さん(仮名・52歳)は、その壁が災いとなったケースを挙げる。

「33歳の女性がバツイチの7歳上の公務員と結婚したんですが、男性は週末になるとパチンコや競馬ざんまいのギャンブル狂。しかも怒りだすと止まらなくなってDV寸前だったそうで、1年で離婚しました。時間をかけてお付き合いをしていればわかっていたことなのにね」

(作家・夏目かをる)

週刊朝日  2017年6月23日号より抜粋