本誌などの取材に思いを語る詩織さん
本誌などの取材に思いを語る詩織さん

「処女ですか」

 フリージャーナリストの詩織さん(28)は、警察官から繰り返し、この質問をされた。

 屈辱的な扱いだと感じた詩織さんは「なぜ必要なのです」と問い返したが、警察官は「聞かなければいけないので」などと繰り返すばかりだったという。

「警察も病院も私を助けてはくれませんでした」

 元TBSワシントン支局長でジャーナリストの山口敬之氏(51)から、2015年4月に意思に反して性行為をされたと主張している。名字は伏せたものの名前と顔を出して、5月29日に記者会見した。

 家族は最後まで反対したが詩織さんはカメラの前に立った。その後、本誌の取材にも応じた。

「将来、生まれる私の子どものためにも、性犯罪の被害者が病院や警察でさらに傷つけられ事実を話すこともできない、そんな社会の状況を変えなければいけないと思った」

 産婦人科では診察室に入るなり、医師から「何時に失敗されちゃったの」と聞かれ、ピルを渡された。

 何事もなかったことにすれば傷つかずに済むのでは、と悩んだ。親友の励ましもあって被害を訴えに行ったが、警視庁高輪署などでは厳しい言葉を投げかけられたという。本人によれば、

「事件として捜査するのは難しい」「この業界で働けなくなる」

 と警察官は繰り返し、被害届の提出を思いとどまるよう説得してきたという。

 逮捕状は出されたものの執行されず、山口氏は書類送検され、嫌疑不十分で不起訴になった。詩織さんは検察審査会に審査を申し立てている。山口氏は「法に触れる事を一切していません。ですから警察・検察の1年以上にわたる調査の結果不起訴となりました」との見解を出している。

 警視庁は被害者の精神的負担の軽減に積極的に取り組んでいるとしているが、詩織さんはそうは感じられなかった。警視庁広報課は取材に対し「指摘の事案については、法と証拠に基づき必要な捜査を遂げた上で、証拠及び証拠物を東京地方検察庁に送付している」としている。

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