滞在3日目には伝統衣装「キラ」をまとい、ブータンの国技「弓技」を体験。弓矢を受け取った直後に、さっそく弓をぽろりと落とし、恥ずかしそうに下を向いた。その後、何度目かで数十メートル先に矢を飛ばすことに成功。続いてブータン式ダーツにも挑戦し、4投目で数メートル先の的に命中させ、安堵(あんど)の表情を浮かべられた。この日着用した赤いキラは、20年前に先代国王から紀子さまに贈られたもの。キラを通じて、皇室と同国との絆を言葉以外でも伝えた。

 最終盤の6月6日は、パロ郊外の山中で、断崖絶壁に立つ「タクツァン寺院」に徒歩で参詣(さんけい)。登山口は馬の糞(ふん)だらけで、独特の臭いが漂っていたが、白いシャツに黒いズボン、赤いトレッキングシューズの眞子さまはさわやかな笑顔で周囲の人に手を振り、元気に出発された。

 寺院までは片道3時間かかる場合もあるといわれるが、眞子さま一行は2時間10分で寺院に到着したという。記者も約50分かけてレストハウスがある中盤まで登ったが、柵もない急峻(きゅうしゅん)な山道はきつい。追従取材が許可されなかったことに、ホッとする気持ちが心の片隅に生じたくらいだった。

 6月9日午後、天皇・皇后両陛下にブータン訪問を報告するため、皇居を訪れた眞子さま。その表情は充実感に溢(あふ)れたものだった。(朝日新聞社会部・中田絢子)

週刊朝日  2017年6月23日号