西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、セパ両リーグの戦力差を解説する。

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 プロ野球は交流戦が始まった。2005年から始まり、今年で13年目を迎える。セ・リーグが勝ち越したのは09年の1度だけで、あとはパ・リーグが勝ち越している。その理由は毎年叫ばれていることだけど、やっぱり「体の強さ」からくるパワーが、パ・リーグのほうが断然ある。

 開幕戦となった5月30日は、メットライフドームでの西武‐広島戦のラジオの解説に行った。広島が5‐0で完勝したけど、パ・リーグと互角以上に戦えるのは広島だと痛感した。今季登板した23試合すべてで中継ぎだった薮田が今季初先発で6回無失点。最速で156キロ出ていたかな。本当に素晴らしい直球を投げるし、強さを感じた。

 そして打つほうでも菊池をはじめ4番を張る鈴木のスイングの力強いこと。5番を打つ安部にしても、練習に裏打ちされた下半身の強靱(きょうじん)さ、振る力を感じる。本当にスケールの大きな選手が投打に育っていると思うよ。

 パ・リーグは、投手は「かわすだけでは駄目」、野手は「うまいだけでは駄目」ということがわかっている。まず圧倒的な強さをつけないと。体の芯からくる強さがないと、年間を戦い抜けない。投打のレベルの高さはそこにある。対してセ・リーグはうまさや小技、結果を求められる。それが1年、2年、3年たてば大きな差になるよね。ただ、広島は昨年も交流戦を勝ち越したように、パと伍(ご)するだけの力がある。あらためてそう思ったよ。

 交流戦は約3週間。各チーム18試合しかないが、その間は同じリーグのチームの戦いは見えない。もちろん数字上の勝敗こそわかるが、直接対決がないから、連勝、連敗で大きな差がついていく。広島と阪神の若手の生きの良さはセ・リーグで際立っている。この2チームがパ球団との戦いで勝ち越したとしたら、巨人やDeNAなどの3位以下のチームと大きな差になる可能性があるよね。

 
 では、セの球団はどう戦うべきか。地力の差は認めた上で、自分たちの野球を貫くしかない。細かくつないで接戦に持ち込んでいく。スケールの大きい戦いをしたら勝てない。個々の選手が状況判断を行い、一人ではなく打線のつながりで勝負する。ただ、それではパとの差は中長期的に見たら埋まらない。

 パ・リーグの上位にいる球団は、交流戦で大きく勝ち越すことを考えているだろう。はっきりいって勝率5割だと、上位球団と差がついてしまう。古巣である西武も勝っていかないと、上位の背中は見えない。

 最後に私事だが、久々に研修会というものに参加した。5月31日に行われた、野球殿堂入りしたプロ野球経験者の特例措置として、高校、大学の指導資格回復手続きが簡略化されたことを受けた第1回の研修会だ。私も含め、中西太さんや古田敦也、佐々木主浩など8人が参加し、プロ、アマ関係の歴史や、高校生の故障防止のための留意点などについて講義を受けた。

 これまで母校の箕島を訪問しても、プロアマの規定があり、私はグラウンドに出られなかった。指導したいというわけではないが、少しでも今の高校生たちや仲間とコミュニケーションはとりたいと思うよね。野球殿堂入りしているOBはたくさんの経験を積んでいる。アマチュア野球界にその知識が還元されるようになれば最高だと思う。

週刊朝日  2017年6月16日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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