――そんな思いが上京への衝動につながったわけですか。

 大学では保健体育を専攻しました。高校の体育の先生になろうと、普通の学生生活を送っていました。でもやっぱりお芝居がしたい、でも大分にいたらできない、でも……そう考えているうちに、もう上京するしかない、と。20歳になって2カ月後、「大学を休学し、どうしても東京でお芝居がしたい」と両親を説得しました。

――演技に興味を持つきっかけは?

 堤真一さんが主演した映画「クライマーズ・ハイ」です。日航機墜落事故をモチーフにした作品で、考えてもどうにもならない状況を、出演者の方々が全力で表現している姿に心が動かされて……。そういう表現者の仲間入りをしたいという思いが生まれました。

――デビュー作品を覚えていますか。

 もちろんです。仲間由紀恵さん主演の「SAKURA~事件を聞く女~」で、事務員の役でした。私のひとつのセリフにも、たくさんの人がかかわって微調整を重ねて作られていくことに驚きました。役者だけでなく、それぞれの専門家であるスタッフの方が集まってひとつの作品を作り上げていくんです。すごく素敵な世界だと感じました。

――「とと姉ちゃん」では「あなたの暮し」編集部の受験生役でした。

 大分にいるおばあちゃんがすごく喜んでくれて。すぐに電話がかかってきました。後で手紙ももらいました。近所のおばちゃんたちに「見たよ」と言われ、涙が出ました、と書いてあって。朝ドラってすごいなと思いました。

――空手が得意なんですね。

 アクションにも挑戦してみたいんです。そのためには、人を殴ったり蹴ったりする感覚がつかめた方がいいかなと思って始めたんです(笑)。「CRISIS」で、若者のテロリスト集団「平成維新軍」の一員の役で出演し、初めてガンアクションを経験しました。学生運動の時代には、若者自身が「若者こそが社会を動かしていくんだ」という衝動を持っていたと聞きます。私たちは「ゆとり世代」と言われますが、経済格差や機会の不平等など、どうにもならない問題もあります。そういった社会への不満をギラギラと見せるようなイメージで演じました。

――休日の過ごし方は?

 最近は洋裁ですね。ミシンを買って、お洋服を作ったりしています。カーディガンやエプロンも作りました。あとは映画を見たり、本を読んだり。家にこもっていることが多いです。

――憧れの俳優は?

 堤真一さんや三船敏郎さん。女性では真木よう子さんや梶芽衣子さんが好きです。たたずまいが美しくて憧れます。

――目標は21世紀の梶芽衣子?

 そんな……恐れ多い(笑)。今はとにかくたくさんの役に出会って、たくさん吸収していきたい。お芝居に真摯に向き合いながら、アクションなど得意なことも活かせるといいなと思っています。

 私、人見知りで、人とお話しするのが苦手なんですね。だから、うまく表現できなくて、その感情が自分の中にたまっていくようなところがあります。でも最近、人とかかわるっていいことだなとすごく感じるんです。できるだけたくさんの人とかかわって、いい作品の一部になりたいと思います。

――「孤食ロボット」で、またおばあちゃんに喜んでもらえそうですね。

 はい。でも、大分では放送がなかったような……。DVDを送ってあげなきゃですね。

(本誌・太田サトル)

※週刊朝日オンライン限定記事