川崎も、チームとしては決して劣っていなかった。司令塔役だった篠山選手の出来は、チャンピオンシップを通して素晴らしかった。この1シーズンで本当に成長したと思います。篠山選手が試合後に、「田臥さんに『まだまだ甘いよ』って言われたようなゲームでした」と語ったと聞きました。田臥選手のすごさを身をもって感じたことと思います。ファイナルで9得点だったエースシューターの辻直人選手にも、このままでは終われないぞという気持ちがあるでしょう。来シーズンが楽しみです。

 ファイナルを見ていて感じたのは、選手たちから発せられる圧の強さです。試合の最初から、見ている我々も息ができないような雰囲気がありました。試合の内容で言えば、勝負どころの第4クオーター残り数分からのプレーが、ずっと続いているような感じ。NBAのファイナルのように4戦先勝制だったとしたら、あの試合内容の濃さは生まれなかったと思います。

 とはいえ、ファイナルが1試合だけというのはもったいない感じがしますね。「バスケをもっとくれ」と世の中が欲するようになれば、試合数が増えていいのかもしれない。いまはまだ、1試合でどれだけお客さんを喜ばせるかが大事な時期。漫画で言えば、週刊誌の連載開始のときのように、今週の1話で読者に満足してもらわなければいけない状況なのでしょう。

 ファイナルが行われた国立代々木競技場では、アルバルク東京と琉球ゴールデンキングスによる開幕戦も行われました。同じ会場なのに、ファイナルは雰囲気がまったく違いました。

 開幕戦は開幕戦で素晴らしかったが、どこか借り物のような空気があった。コートと観客席が別のものとして存在するような。それが、ファイナルのときには、観客席とコート上の一体感があった。この雰囲気を作ったのは間違いなく、チームカラーの黄色いTシャツに身を包んだ栃木ファンの存在だったと思います。

 応援時の声の出し方や、盛り上がりの作り方。栃木のファンが本拠で作り上げてきたものを、そのまま代々木に持ち込んでいるなと感じました。会場の雰囲気を自分たちの間合いに引き入れて戦う、といった感じでしょうか。栃木はBリーグが開幕する以前から地元に根ざして活動し、ファンを増やしてきた。いままで栃木が積み重ねてきたものが、文化として定着しているなと感じました。

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